Books(社会)

▼『内部告発と公益通報』櫻井稔

牛肉産地偽装,自動車メーカーのリコール隠し,警察の公金不正流用,建設業界の官製談合‥‥官民問わずに不祥事が続いている.そしてこれらの事件の多くは,関係者による内部告発がきっかけとなって明るみに出ている.内部告発はどのようなメカニズムでなされ…

▼『限りなき魂の成長』ジョン・P・コッター

お決まりの賛辞で厚く覆われた「人間・松下幸之助」を世界標準の視点で捉え直した,日本人には書けなかった斬新な幸之助像.生涯にわたる驚くべき成長と,一連の苦難を再検討し,松下幸之助の尋常ならざる業績を理解する――. 立志伝中の人ほど,客観的な評価…

▼『われ万死に値す』岩瀬達哉

「私自身顧みて,罪万死に値する」国会でそう証言した元首相,竹下登.国のキングメーカーにまで登りつめ,今なおその残影は永田町を覆う.前妻の自殺,実父との確執,巧妙な錬金術,そして秘書たちの死‥‥にこやかな仮面の下に隠された彼の罪と業とは何か.…

▼『優生学と人間社会』米本昌平,松原洋子〔他〕

歴史の真実から,現代に優生思想を問い直す優生学は過去のタブーか.ナチズム=優生学だったのか.福祉国家北欧や戦後日本の優生思想とは.新しい優生学とは.遺伝子技術の時代を考えるための必読の書――. 先見の明をもつ一部の人々に引きずられる大衆.その…

▼『生きるための選択』パク・ヨンミ

北朝鮮では,死体が放置される道を学校に通い,野草や昆虫を食べて空腹を満たし,"親愛なる指導者"は心が読めて,悪いことを考えるだけで罰せられると信じて生きてきた.鴨緑江を渡って脱北した中国では,人身売買業者によって囚われの身になり,逃れてきた…

▼『警察庁長官を撃った男』鹿島圭介

1995年3月,日本中を震撼した国松孝次警察庁長官狙撃事件.特別捜査本部を主導する警視庁公安部がオウム犯行説に固執する一方,刑事部は中村泰なる老スナイパーから詳細な自供を得ていた.だが,特捜本部は中村逮捕に踏み切らず,事件は時効を迎えてしまう.…

▼『賭博と国家と男と女』竹内久美子

君主はそもそも賭博の胴元だった?一夫多妻社会では文化が創造される!好色な男は組織の指導者として最高だが,恐妻家の男が国家のトップになると国が滅びる‥‥文化,階級社会,そして男と女の力関係の謎を利己的遺伝子(セルフィッシュジーン)と“賭博”をキ…

▼『失敗の本質』戸部良一,寺本義也,鎌田伸一〔他〕

大東亜戦争における諸作戦の失敗を,組織としての日本軍の失敗ととらえ直し,これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用することをねらいとした本書は,学際的な共同作業による,戦史の初めての社会科学的分析である――. 大東亜戦争にお…

▼『死へのイデオロギー』パトリシア・スタインホフ

閉ざされた集団の観念が,抑えのきかない凄惨な暴力をよび起こした.1960年代末,過熱する学生運動の中から誕生した赤軍派.本書は,同志粛清,あさま山荘へと突き進んでいったこの党派を社会学的に分析した秀作である.彼らはなぜ粛清という恐怖の淵に落ち…

▼『烈士と呼ばれる男』中村彰彦

「ここまできて三島がなにもやらなかったら,おれが三島を殺る」三島由紀夫と死を共にした青年・森田必勝は,いかにしてその胸底に死を育て,また三島はなぜ彼を受け入れたのか.異様な生彩を放つ短い生涯を史伝文芸の味わい豊かに描きつつ,遺族,友人など…

▼『赤狩り時代の米国大学』黒川修司

一九九〇年,ミシガン大学の米国大学教授連合支部の機関誌に,赤狩りの犠牲者三名の名誉回復の記事が出た.これがきっかけで著者は,米国が今も後ろめたく感じているマッカーシーイズムの時代に,米国の教官,大学,そして団体が学問の自由にいかに対応した…

▼『黒い看護婦』森功

悪女(ワル)―同じ看護学校を出た看護婦仲間.一見,平凡な中年女性たちは,身近な人々を次々に脅し,騙し,そして医療知識を駆使した殺人にまで手を染めていた.何が,女たちをかくも冷酷な犯罪へと走らせたのか.事件の背後には,四人組の特殊な人間関係,な…

▼『裏のハローワーク』草下シンヤ

オモテがあれば,ウラもある.スーツを着て,定時に出社して,興味の持てない仕事をして食べていくのもひとつの生き方.しかし世の中には,そうでない仕事も多数存在する.マグロ漁船から,大麻栽培,治験バイト,夜逃げ屋,偽造クリエイターまで,世の中の…

▼『大仏破壊』高木徹

それは,9.11のプレリュード(前奏曲)だった.9.11同時多発テロの前に,タリバンが支配するアフガニスタンにおいて大仏遺跡の破壊が行なわれた.その背後には,ビンラディンとアルカイダの周到な計画があった.バーミアンの大仏破壊に秘められた衝撃の真相と…

▼『マルクス・エンゲルス小伝』大内兵衛

「マルクスは古くなったのか」.豊かな知見にもとづいて2人の生涯を描き,代表的な原典の読み方をていねいに教えながら思想の本質を説明する.1960年代,若い人に向けて語りかけたマルクス主義への入門書――. 大月書店の国民文庫,青木書店の青木文庫,岩波…

▼『左遷論』楠木新

左遷という言葉は「低い役職・地位に落とすこと」の意味で広く用いられる.当人にとって不本意で,理不尽と思える人事も,組織の論理からすれば筋が通っている場合は少なくない.人は誰しも自分を高めに評価し,客観視は難しいという側面もある.本書では左…

▼『完訳 マルコムX自伝』マルコムX

スラムの中で麻薬を常用,強盗にまで堕したマルコムは,刑務所で自己の価値に目ざめ,黒人イスラム教団の最も戦闘的で説得力のあるリーダーとなる.非宗派的な黒人解放組織を設立し,新しい活動を深めるなかでの暗殺.なぜ黒人は人間であることを否認される…

▼『完全なるチェス』フランク・ブレイディー

二十年にもわたって姿を消していたチェス世界チャンピオンは往年のライバルと対戦すると,ふたたび消息を絶った.クイーンを捨て駒とする大胆華麗な「世紀の一局」を十三歳で達成.冷戦下,国家の威信をかけてソ連を破り,世界の頂点へ.激しい奇行,表舞台…

▼『徐兄弟 獄中からの手紙』徐京植編訳

日本に生まれ育った二人の韓国人が,一九七一年,祖国留学中に突然「北のスパイ」として逮捕された.弟の徐俊植氏は八八年,兄の徐勝氏は九○年にようやく釈放されたが,彼らの獄中の日々を支えたものは何か.京都の母や妹あて書簡を末弟の眼で編んだ本書は,…

▼『ザ・ハウス・オブ・ノムラ』アル・アレツハウザー

とかく不透明と言われる日本の証券界に君臨し,市場支配する巨大企業・ノムラ.野村はいかにして世界のノムラとなりえたのか.いったいこれから何をめざしているのか.自らも証券マンである著者が,膨大な資料と数百人に及ぶ関係者の証言に基づき,ノムラの…

▼『白昼の死角』高木彬光

明晰な頭脳にものをいわせ,巧みに法の網の目をくぐる.ありとあらゆる手口で完全犯罪を繰り返す“天才的知能犯”鶴岡七郎.最後まで警察の追及をかわしきった“神の如き”犯罪者の視点から,その悪行の数々を冷徹に描く.日本の推理文壇において,ひと際,異彩…

▼『ビヒモス』トマス・ホッブズ

『リヴァイアサン』で知られるホッブズ(一五八八‐一六七九)の政治論はいかに構築されたか.その基盤となる歴史観を示す,著者晩年の代表作.世代の異なる二人の対話形式で一六四〇‐五〇年代のイングランド内戦の経緯をたどり,主権解体と無秩序を分析する――.…

▼『私は魔境に生きた』島田覚夫

昭和十九年六月,孤立無援の東部ニューギニアで味方部隊の再来を信じて篭城した日本軍兵士十七名.熱帯雨林の下,飢餓と悪疫,そして掃討戦を克服して生き残った四人の男たちのサバイバル生活を克明に描いた体験記.敗戦を知らず,十年間の“生存”に挑んだ逞…

▼『そして殺人者は野に放たれる』日垣隆

「心神喪失」の名の下で,あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や,お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が,罪に問われない異常な日本."人権"を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア,その傍らで放置され…

▼『経済学は悲しみを分かち合うために』神野直彦

「お金で買えないものこそ大切にしなさい」.幼き頃の母の教えに導かれ,やがて青年は経済学の道を歩みはじめる‥‥新自由主義に抗い,人間のための経済を提唱する著者の思想はどのようにして育まれてきたのか.自らの人生,宇沢弘文氏ら偉大な師や友人らとの…

▼『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』木村元彦

1999年のNATO軍の空爆により,コソボ紛争は公式には「終結」したことになっている.しかし現地では,セルビア系の民間人が三〇〇〇人規模で行方不明になるなど,空爆前とは違った形で「民族浄化」が続き,住民たちは想像を絶する人権侵害の危機にさらされて…

▼『裁かれた命』堀川惠子

一九六六年(昭和四一年),東京・国分寺市で一人の主婦が被害者となった強盗殺人事件が発生した.四日後に逮捕された二二歳の犯人・長谷川武は,裁判でさしたる弁明もせず,半年後に死刑判決をうけ,五年後には刑が執行された.その長谷川死刑囚が,独房から…

▼『情と理』後藤田正晴

中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい,歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴.混乱する政局を舌鋒鋭く斬り,"カミソリ"の異名を取った彼の直言は,各界から幅広い支持を得てきた.そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った,貴重な戦後政官…

▼『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争』デイヴィッド・ハルバースタム

1950年,北朝鮮軍の南進により勃発した朝鮮戦争.反共の名の下に,参戦を決定したアメリカだったが,それは過酷極まりない戦争への突入だった.スターリン,金日成,トルーマン,マッカーサー,毛沢東‥‥時の指導者たちが抱いた野望と誤算,彼らに翻弄され凍…

▼『シビル・アクション』ジョナサン・ハー

1960年代後半,ボストン近郊の町ウォーバーンでは急性リンパ性白血病に倒れる子供が相次いだ.地区の8家族は水源の汚染が原因であるとし,産業廃棄物を捨てた疑いが濃厚な企業2社を相手に民事訴訟に踏み切った.住民側の弁護士ジャン・シュリクトマンは,経…