Books(人文)

▼『平家物語』市古貞次〔校注・訳〕

清盛と平氏一門の興亡を叙事詩的に描いた軍記物語.挿絵(解説付)をはじめ,精密な語注,なめらかな訳文に加え,系図,年表,地図等も充実した,平家物語の決定版――. 平家一門の興亡と無常の命運を紡ぎ出す鎮魂の平曲「祇園精舎の鐘の声,諸行無常の響あり…

▼『神の火』高村薫

原発技術者だったかつて,極秘情報をソヴィエトに流していた島田.謀略の日々に訣別し,全てを捨て平穏な日々を選んだ彼は,己れをスパイに仕立てた男と再会した時から,幼馴染みの日野と共に,謎に包まれた原発襲撃プラン〈トロイ計画〉を巡る,苛烈な諜報…

▼『快楽としての動物保護』信岡朝子

私たちは,絶滅が危惧される動物や虐待される動物に胸を痛め,動物を大事にするのはよいことだ,と信じています.しかし,そうした考えの起源は意外に新しいものです.誰もが子どもの頃に手にした『シートン動物記』の著者,テレビ番組の取材中にヒグマに襲…

▼『予告された殺人の記録』ガブリエル・ガルシア=マルケス

町をあげての婚礼騒ぎの翌朝,充分すぎる犯行予告にもかかわらず,なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件.凝縮されたその時空間に,差別や妬み,憎悪といった民衆感情,崩壊寸前の共同体…

▼『媚びない力』杉良太郎

媚を売ることを嫌い,一途一心の気構えで芸を磨いてきた杉良太郎.下積み時代の屈辱の体験,芸能界の荒波を乗り切る知恵と工夫,芸の先達から政治家まで錚々たる戦後名士たちの素顔,時に「売名」と揶揄された福祉活動の真実‥‥デビューからの50年間が大胆に…

▼『日本人とユダヤ人』イザヤ・ベンダサン

評論家・山本七平が,ユダヤ人イザヤ・ベンダサンとして1970年に発表し,300万部を超えるベストセラーとなった記念碑的名著.砂漠対モンスーン,遊牧対農耕,放浪対定住,一神教対多神教など,ユダヤ人との対比という独自の視点から展開される卓抜な日本人論…

▼『あなたの知らないガリバー旅行記』阿刀田高

『ガリバー旅行記』はどなたもよくご存知でしょうが,作者スウィフトの人物像や当時のイギリスを知らないと,諷刺,洒落,ブラック・ユーモアなどは十分に理解できないところがあります.豊富な薀蓄を駆使して,その桁はずれの面白さを分かり易く解説・紹介…

▼『蒼き狼』井上靖

遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真(テムジン)=成吉思汗(チンギスカン)は,他民族と激しい闘争をくり返しながら,やがて全蒙古を統一し,ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる.六十五歳で没するまで,ひたすら敵を求め,侵略と掠奪を続けた彼のあくな…

▼『光の子と闇の子』ラインホールド・ニーバー

"キリスト教的現実主義"の立場から,ジミー・カーター,ブッシュ父子,バラク・オバマらアメリカの政治家たちに大きな影響を与えてきたラインホールド・ニーバーの古典的名著を復刊.第二次世界大戦末期に刊行され,デモクラシー社会が内包する脆弱性を指摘…

▼『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

ナチスのユダヤ人虐殺を筆頭に,組織に属する人はその組織の命令とあらば,通常は考えられない残酷なことをやってしまう.権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために,前代未聞の実験が行われた.通称,アイヒマン実験‥‥本書は世界を震撼させた…

▼『けものたちは故郷をめざす』安部公房

ソ連軍が侵攻し,国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満州.敵か味方か,国籍さえも判然とせぬ男とともに,久木久三は南をめざす.氷雪に閉ざされた満州からの逃走は困難を極めた.日本という故郷から根を断ち切られ,抗いがたい政治の渦に巻き込まれた人間に…

▼『清水次郎長』高橋敏

「海道一の親分」を謳われた清水次郎長を措いて幕末維新のアウトローを語るに他はない.本書は歴史学の手法を駆使して,血で血を洗う並み居る強敵たちとの死闘を勝ち抜き,時代の風を読んでしぶとく生き残った稀代の博徒の実像に迫る.巷間知られる美談仁侠…

▼『ゲルマーニア』コルネリウス・タキトゥス

民族大移動以前の古代ゲルマン民族について誌された最古の記録.古代ローマの歴史家タキトゥス(五五頃‐一二〇?)は,開化爛熟のはてに頽廃しつつある帝政ローマと対照させながら,いま勃興し,帝国の北辺をおびやかす若い民族の質朴勇健な姿を描き出す.簡…

▼『カフカ寓話集』フランツ・カフカ

迷路のような巣穴を掘りつづけ,なお不安に苛まれる大モグラ.学会へやってきて,自分の来し方を報告する猿‥‥死の直前の作「歌姫ヨゼフィーネ」まで,カフカ(1883-1924)は憑かれたように奇妙な動物たちの話を書きつづけた.多かれ少なかれ,作者にとって…

▼『兼好法師』小川剛生

兼好は鎌倉時代後期に京都・吉田神社の神職である卜部家に生まれた.六位蔵人・左兵衛佐となり朝廷に仕えた後,出家して「徒然草」を著す.この,現在広く知られる彼の出自や経歴は,兼好没後に捏造されたものである.著者は同時代史料をつぶさに調べ,鎌倉…

▼『魔の系譜』谷川健一

正史の裏側から捉えた日本人の情念の歴史.死者の魔が生者を支配するという奇怪至極な歴史の底流に目を向け,呪術師や巫女の発生,呪詛や魔除けなどを通して,日本人特有の怨念を克明に描いた魔の伝承史――. 虻や蝶に姿を変えて霊が飛来することが信仰され,…

▼『イワン・デニーソヴィチの一日』アレクサンドル・ソルジェニーツィン

1962年の暮,全世界は驚きと感動で,この小説に目をみはった.当時作者は中学校の田舎教師であったが,その文学的完成度はもちろん,ソ連社会の現実をも深く認識させるものであったからである.スターリン暗黒時代の悲惨きわまる強制収容所の一日を初めてリ…

▼『マヤの一生』椋鳩十

マヤがわたくしの家に着いた時は片手にのる程の小さな犬だった.マヤは,はじめに抱いてくれた次男に一番なついていた.ニワトリのピピ,ネコのベルとも仲良く暮していたが,戦争が激しくなった時,国からマヤを殺すようにと通知がきた‥‥戦時下,動物と人間…

▼『帝王』フレデリック・フォーサイス

八時間に及ぶ凄絶なファイトの果てに,五〇〇㎏を超える伝説のブルーマルリン“帝王”を釣った男に訪れた劇的な運命の転換とは?冒険,復讐,コンゲーム‥‥男の世界を描く魅力の傑作集――. フレデリック・フォーサイス(Frederick Forsyth)の作品には,彼の多…

▼『黒地の絵』松本清張

朝鮮戦争のさなか,米軍黒人兵の集団脱走事件の起った基地小倉を舞台に,妻を犯された男のすさまじいまでの復讐を描く「黒地の絵」.美術界における計画的な贋作事件をスリリングに描きながら,形骸化したアカデミズム,閉鎖的な学界を糾弾した「真贋の森」…

▼『舞台の上の権力』ジョルジュ・バランディエ

あらゆる社会において,「コード」や「ネットワーク」といった社会構造に還元できない「演劇のパラダイム」が作用している.それは,社会のさまざまなレベルに拡散された権力関係に照明を当て,社会の常態としての政治を浮かび上がらせる.そして,アフリカ…

▼『野上弥生子短篇集』野上弥生子

20世紀のほとんどを生きた,私たちと同時代の作家野上弥生子(1885‐1985).『真知子』『迷路』『森』などの骨太な長篇小説で知られる野上弥生子は,また,克明な観察力と鍛えぬかれた描写力による確かな人間造形が際立つ,練達の短篇作家である.「或る女の話…

▼『タラへの道』アン・エドワーズ

レット・バトラーのモデルは著者の最初の結婚相手だった.生涯でただ一冊不朽の名作を書いた女性の謎のヴェールがはがされた.それはまるでもう一冊の「風と共に去りぬ」である――. 情熱・知識・経験のすべてを一作に投入したと生前に語ったマーガレット・ミ…

▼『エスペラント』田中克彦

誕生して一二〇年,国家の枠を超えようとする「危険な言語」,正統派言語学者たちにとっては「異端の言語」‥‥国際共用語・エスペラントのたどった道のりは劇的で険しいものだった.この言語の構造と特性,受容と反発の歴史の生き生きとした紹介から,「言語…

▼『ドリナの橋』イヴォ・アンドリッチ

ボスニア地方の美しい石橋「ドリナの橋」を舞台に,橋の上を去来する人間たちの運命を中世から400年にわたって,あたかも大河の流れのごとく,静かに,ゆったりとした筆致で描くノーベル賞作家イヴァン・アンドリッチの代表作――. ユーゴスラビア連邦共和…

▼『科挙』宮崎市定

二万人を収容する南京の貢院に各地の秀才が官吏登用を夢みて集まってくる.老人も少なくない.完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら,凄惨な試験地獄を生み出す社会の本質をさぐる――. およそ70万余字「四書・五経」.その暗記から始まる“科挙”対…

▼『マリー・アントワネット』安達正勝

名門ハプスブルク家に生まれたマリー・アントワネットは,フランス王妃となり,ヴェルサイユ宮殿で華麗な日々を過ごしていた.だが,一七八九年のフランス革命勃発で運命が急変.毅然と反革命の姿勢を貫き,三十七歳の若さで断頭台の露と消えた.悪しき王妃…

▼『司馬遷と史記』エドゥアール・シャヴァンヌ

父,司馬談の意志を継ぎ,“宮刑”という屈辱的体験の中から生み出された「史記」.著者司馬遷が辿った人生,思想を掘り起し,古代ヨーロッパの歴史家との比較研究を試みたユニークな史記研究――. 司馬遷『史記』以前に,40世紀にわたる民族の歴代正史の道はな…

▼『狂気の偽装』岩波明

現代日本で急増する「心の病」.マスコミは,新たな社会現象に合わせて乱造された「病名」を喧伝し,悲惨な事件が起これば被害者を「PTSD」だと安易に決めつけ,「心のケア」を気軽に叫ぶ.だが,それは正しい診断なのか?その患者は本当に精神疾患なのか?精…

▼『ロダン』菊池一雄

一 ロダンと日本,二 人間ロダン,三 鼻のつぶれた男,四 青銅時代,五 歩く人,六 地獄の門,七 カレーの市民,八 ヴィクトル・ユーゴー,九 バルザック,一〇 肖像,一一 晩年のロダン,一二 ロダンの芸術,年譜・参考文献,あとがき――. 彫刻にこそ真の姿…