Books(社会)

▼『給食の歴史』藤原辰史

小中学校で毎日のように口にしてきた給食.楽しかったという人も,苦痛の時間だったという人もいるはず.子どもの味覚に対する権力行使の側面と,未来へ命をつなぎ新しい教育を模索する側面.給食は,明暗二面が交錯する「舞台」である.貧困,災害,運動,…

▼『裁判官も人である』岩瀬達哉

原発再稼働の可否を決め,死刑宣告をし,「一票の格差」について判断を下す―裁判官は,普通の人には想像できないほどの重責を負う.その重圧に苦悩する裁判官もいれば,個人的な出世や組織の防衛を優先する裁判官もいる.絶大な権力を持つ「特別なエリート」…

▼『「市民社会」とは何か』マイケル・エドワーズ

現代政治において,今もっとも重要な概念のひとつであり,存在意義を高めつつある市民社会を理念と実践の両側面から縦横に論じた待望の書――. 論者や識者によって好んで使われる概念でありながら,確たる定義も持ち合わせていない言葉が跋扈するのは,考えて…

▼『知事抹殺』佐藤栄佐久

東京一極集中に異議を唱え,原発問題,道州制などに関して政府の方針と真っ向から対立,「闘う知事」として名を馳せ,県内で圧倒的支持を得た.第五期一八年目の二〇〇六年九月,県発注のダム工事をめぐる汚職事件で追及を受け,知事辞職,その後逮捕される…

▼『自動車絶望工場』鎌田慧

働く喜びって,なんだろう.毎日,絶望的に続くベルトコンベア作業の苛酷さ.現代の矛盾の集中的表現としての自動車は,労働の無内容さと人間の解体を満載し,排気ガス,石油資源などの諸問題を前にして,いま大転換を迫られている.自ら季節工として働いた…

▼『沖縄密約』西山太吉

日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが,近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた.核の持込み,日本側の巨額負担….かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が,豊富な資料を基に「…

▼『永山則夫』堀川惠子

日本社会を震撼させた連続射殺事件の犯人,永山則夫.生前,彼がすべてを語り尽くした膨大な録音テープの存在が明らかになった.一〇〇時間を超える独白から浮かび上がる,犯罪へと向かう心の軌跡.これまで「貧困が生み出した悲劇」といわれてきた事件の,…

▼『成長の経済学』ポール・バラン

第一章 概説 第二章 経済余剰の概念 第三章 独占資本主義下の静止と運動 I 第四章 独占資本主義下の静止と運動 II 第五章 後進性の根本原因について 第六章 後進性の形態学序説 I 第七章 後進性の形態学序説 II 第八章 険阻な上り坂――. ウクライナ出身,フ…

▼『子供たちは森に消えた』ロバート・カレン

ソ連邦崩壊をひかえた1982年,ロシア南部の森のなかで,凌辱の跡もあらわな少女の惨死体が発見された…それがすべての始まりだった.森に誘いこまれ殺される子供が続出し,事件を担当するブラコフ捜査官は,精神科医の協力を得て恐るべき連続殺人犯を追う.そ…

▼『タテ社会の人間関係』中根千枝

日本社会の人間関係は,個人主義・契約精神の根づいた欧米とは,大きな相違をみせている.「場」を強調し「ウチ」「ソト」を強く意識する日本的社会構造にはどのような条件が考えられるか.「単一社会の理論」によりその本質をとらえロングセラーを続ける――.…

▼『アダム・スミス』堂目卓生

政府による市場の規制を撤廃し,競争を促進することによって経済成長率を高め,豊かで強い国を作るべきだ―「経済学の祖」アダム・スミスの『国富論』は,このようなメッセージをもつと理解されてきた.しかし,スミスは無条件にそう考えたのだろうか.本書は…

▼『戦争と資本主義』ヴェルナー・ゾンバルト

戦争なくして資本主義はなかった.軍需による財政拡大は資本形成を促し,常備軍の増強は農業,流通,貿易に影響を与え,武器の近代化は製鉄や機械製作,造船,繊維産業の成長をもたらす.そして軍隊の「指導と行動の分業化」が大量生産した画一的人間.豊富…

▼『十八世紀ヨーロッパ監獄事情』ジョン・ハワード

自らの拘禁経験と博愛主義の精神から,延べ六回にわたりヨーロッパ十一カ国の監獄を歴訪したジョン・ハワード(1726‐90)は,徹底した調査と観察にもとづいて,監獄の現状を記し監獄改革を提言する報告書をまとめた.本書は,その一部を訳出したものであるが,…

▼『資本主義と闘った男』佐々木実

「資本主義の不安定さを数理経済学で証明する」.今から50年以上も前,優れた論文の数々で,世界を驚かせた日本人経済学者がいた.宇沢弘文―その生涯は「人々が平和に暮らせる世界」の追求に捧げられ,行き過ぎた市場原理主義を乗り越えるための「次」を考え…

▼『財務官僚の出世と人事』岸宣仁

試験の成績に関する限り,彼らは幼少の頃から「優秀」「できる子」の折り紙をつけられ,「神童」の評判を取った人物も多かったはずだ.それだけ頭のいい人物がいったいどんな出世競争を繰り広げているのか.日本一熾烈なエリート戦争,勝者と敗者を分けたも…

▼『風船爆弾』鈴木俊平

和紙と蒟蒻糊で作った直径10メートルの水素ガス気球に爆弾と焼夷弾を吊るし,高度1万メートルのジェット気流にのせてアメリカ本土を直撃する!昭和19年11月,悪化した戦局打開を図る起死回生の秘密兵器は,過酷な戦争の渦中とも思えぬ幻想的な姿を見せて,太…

▼『マングローブ』西岡研介

平成ニッポンに残された最大・最後のタブー「JR革マル派問題」.なぜ,世界最大級の公共交通機関は革マル派に支配されたのか.盗聴,窃盗,内ゲバ殺人を繰り返し,警察ですら容易に手出しできない犯罪組織の実情に迫る驚愕のノンフィクション――. 世界最大の…

▼『ケイトンズヴィル事件の九人』ダニエル・ベリガン

ケイトンズヴィル事件というのは,1968年にアメリカ合衆国メリ-ランド州のケイトンズヴィルという町で実際に起こった事件である.兵役事務所へ9人のカトリック教徒が白昼堂々と出かけて行き,徴兵書類を外へ運び出してガソリンをふりかけ,火をつけて…

▼『憲法と君たち』佐藤功

改憲か護憲かで揺れていた1955年.若き憲法学者が,子どもたちに向けて一冊の本を残していた.人間の歴史の中で,憲法は何のために,どのようにして作られてきたのか.そして,なぜ大切にしなければならないのか.憲法の本質を,やさしく語り掛けるように解…

▼『死の貝』小林照幸

米粒ほどの巻貝に潜む虫が,かつて日本各地の人々を死に至らしめた.それは世にも恐るべき奇病であったが,日本はこの寄生虫を駆逐した唯一の国である.日本住血吸虫症を撲滅した,官民一体の知られざる奮闘を描く――. 九州地方北部を東から西に流れ,有明海…

▼『標的は11人』ジョージ・ジョナス

1972年9月,PLOの過激派「黒い九月」がミュンヘン五輪選手村を襲撃し,イスラエル選手団の一部を虐殺した.激怒したイスラエルの秘密情報機関モサドは暗殺チームを編成し,アラブ・テロリスト指導部の11人を次々に消して行く‥‥今は本名を変えて米国に住む,…

▼『なぜ三ツ矢サイダーは生き残れたのか』立石勝規

ロマンと苦闘に満ちた「三ツ矢サイダー」.文豪・夏目漱石や宮沢賢治が愛した飲み物はサイダーだった.誕生は大航海時代に遡るサイダーが,なぜ,日本上陸から125年たった今も生き残れているのか――. 炭酸飲料の中でも,国内ブランドの旗手が三ツ矢サイダー…

▼『四人はなぜ死んだのか』三好万季

中学の夏休みの理科の宿題で,和歌山の「毒入りカレー事件」を取り上げた15歳の少女は,インターネットを駆使した調査と綿密な分析によって,やがて驚くべき結論に辿り着く…「犯人は他にもいる」.文芸春秋読者賞を史上最年賞で受賞,「天声人語」他各紙誌で…

▼『VOW王国 ニッポンの誤植』宝島編集部 編

声に出すと笑ってしまう.誤植はおかしくて哀しい….名作VOW,誤植界のバイブル『脱日語』入手,ニッポンを揺るがした誤植たち,歴代名作誤植,出版ギョーカイ最新誤植事情などを掲載――. 悪筆で知られた夏目漱石や悪筆四天王(石原慎太郎,黒岩重吾,田中小…

▼『外交官E・H・ノーマン』中野利子

外交官で歴史家のE・H・ノーマンは,なぜ赤狩りの標的にされ,カイロで自殺したのか?カナダ人の宣教師の次男として軽井沢に生れた彼は少年時代を日本で過ごした.ケンブリッジ,ハーヴァード大学で歴史を専攻,1939年カナダ外務省に入省.マッカーサーの腹心…

▼『災害ユートピア』レベッカ・ソルニット

不幸のどん底にありながら,人は困っている人に手を差し伸べる.人々は喜々として自分のやれることに精を出す.見ず知らずの人間に食事や寝場所を与える.知らぬ間に話し合いのフォーラムができる…なぜその"楽園"が日常に生かされることはないのか?大爆発,…

▼『鑑識捜査三十五年』岩田政義

犯罪捜査の世界で"鑑識の神様"とよばれ,伝説化されている警視庁警視の,小説を圧倒するおそるべき体験記.「弾丸箱を追って」「手の甲に赤いひも跡」「死顔に化粧する」「ふしぎな現場」など40話――. 東京市本所区(当時)の警察署に巡査として1926年入職し…

▼『有閑階級の理論』ソースティン・ヴェブレン

制度の進化論的プロセスを記述して,ガルブレイスなどに大きな影響を及ぼし,現代の経済人類学・消費社会論的思考の先駆者業績ともなった,ヴェブレンの主著の画期的新訳――. 工業部門で急激な成長を遂げた1870年以後のアメリカ経済について,ソースティン・…

▼『38人の沈黙する目撃者』A.M.ローゼンタール

深夜のニューヨークで若い女性がむごたらしく殺害された.38人もの近隣住民がそれを目の当たりにしたにもかかわらず,救おうとするどころか,誰も通報さえしなかった.後に心理学の「傍観者効果」説まで生んだ特異な事件の真相とは?ピュリッツァー賞記者がミ…

▼『フォーカス スクープの裏側』フォーカス編集部

FOCUS創刊前,盗撮カメラマンのテクニックは「粘る」ことだけだった.81年,FOCUSの登場によって,盗撮技術は革命的な変化をとげる.追跡,モニター監視,無線機,そして隠しカメラ….数多くの政治家,財界人,芸能人がカメラマンのターゲットになり,「フォ…