▼『われわれはどこへ行くのか』カール・フォン・ヴァイツゼッカー

われわれはどこへ行くのか―世界の展望と人間の責任 ミュンヘン大学連続講義集

 世界的に著名な原子物理学者であり哲学者でもあるカール・フォン・ヴァイツゼッカーヒトラー時代反骨の学者として生き抜いた氏が,我々に向けて贈る平和・宗教・学問への爽やかな時代証言.事実上,氏の最終講義となる97年,ミュンヘン大学連続講義集――.

 西ドイツの原子物理学研究の中心・ゲッティンゲン大学で,18名の物理学者が発表した「いかなる形でも原子兵器の製造,実験,使用には参加しない」という「ゲッティンゲン宣言」.カール・フォン・ヴァイツゼッカー(Carl Friedrich von Weizscker)も署名者の1人である.ヴェルナー・ハイゼンベルク(Werner Karl Heisenberg)のもとで原子核の理論研究に従事したヴァイツゼッカーは,近似式(ワイツゼッカー‐ウィリアムス近似)で名高い.

 盟友の哲学者ゲオルク・ピヒト(Georg Picht)の示唆により,ヴァイツゼッカーの関心は,物理学と哲学・神学との統合という学際領域に向かった.ミュンヘン大学連続講義を収めた本書では,「政治の責任」「宗教の役割」「学問の貢献」「なすべきことは何か」という抽象度の高い展望を説く.戦後ドイツの安全保障政策に与えたヴァイツゼッカーの影響は,学際性と到達度の高さによるものであると理解できよう.

 その思想の洞察と認識を知るうえで,本書は外せない文献.統一ドイツ初代大統領リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(Richard Karl Freiherr von Weizsäcker)は,カールの実弟である.比重は違えど,彼らは自然・人間・社会三科学の現実的統合化を探求した「行動する知識人」であった.

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Title: WOHIN GEHEN WIR?

Author: Carl Friedrich Weizsäcker

ISBN: 4623041514

© 2004 ミネルヴァ書房