プロローグ; 科学における対人関係戦略の重要性,第1部 科学戦略家入門,第2部 科学の戦略家にとって兼合いの難しい問題,第3部 科学の戦略家にとって特別に興味のある問題領域――. |
あらゆる社会制度・政策,規範に多大な影響をもたらす知見として,研究成果の質が評価される時代を迎えた20世紀.科学の分野で優れた業績を上げるには,「対人関係の巧みな処理」が重要となる.その指摘から始まる本書は,科学を1つの「ゲーム」と見立て,活力,知性,洞察力以上の変数となるものを詳細に挙げ,戦略とルールを解説する.メタフィクション的な論じ方であるが,ここで扱われているのは,紛れもなく斯界や学問の塔における「関数関係」なのである.
論文数,研究資金はこの数十年で指数関数的に増加したといってよく,「科学の終焉」を唱えたジェイムズ・P・ホーガン(James Patrick Hogan)の懸念は,「発行せよ,しからずんば破滅せよ」という科学者の一義的原理の中で根が深まる.インターディシプリナリーと逆行するように定性的パラダイムの枠内で応用・微修正を繰り返す研究,業績量産型のサイエンティストの成功ルートは,近縁関係を結んでいるかのように見え,もはや蜜月と呼んでよいかもしれない.
カール・J.シンダーマン(Carl J Sindermann)は,ニュージャージー州のサンディフック臨海実験所の所長,メリーランド州とフロリダ州にある海洋研究所の所長を兼務.また,ロードアイランド大学の海洋分野の兼任教授を経てきた.本書は「サイエンティストの成功」をテーマにした三部作の1作目.「簡明こそ自然.複雑は悪魔と人間の業」をシニカルに「シンダーマンの絶対ミニマムの法則」と名付けた時代よりも,当世の諸科学分野は息が詰まるような無残を呈している.
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原題: WINNING THE GAMES SCIENTISTS PLAY
著者: Carl J Sindermann
ISBN: 4762205362
© 1987 学会出版センター