■「ローズ家の戦争」ダニー・デヴィート

ローズ家の戦争 [DVD]

 熱烈な恋愛と蜜のように甘い結婚.立派な豪邸と2人の子供をもうけ,ローズ家はシアワセの絶頂のはずだった.しかし結婚17年目にして妻がベッドで放った強烈な憎しみのパンチ! ここに2人の命をかけた離婚戦争がはじまった….

 烈な夫婦ゲンカに笑い,呆れ,鑑賞後には疲労感が残る映画.かといって不出来なわけではまったくない.若かりし頃は,しばしば「この相手がいなければ,自分の人生は不完全」とまで思い込む.夫婦の縁は切っても切れないものと考える向きもあるが,それは幻想.燃え上がった情の炎は,いったん冷めると石のように重く,冷たく男女に圧しかかる.縁を切ることも,憎み合うこともできるのだ.そして,その陥穽は,決して特別なケース(夫婦)に限定されない.

 これは,離婚訴訟を手がける弁護士・ギャビンの語った辛辣な「夫婦関係」という教訓の物語――法律事務所に勤めるオリヴァーと,インテリア好きのバーバラが出会ったのは17年前.熱く愛し合った2人は夫婦となり,オリヴァーは順調に出世,子宝にも恵まれた.子どももある程度大きくなると,バーバラは仕出しの商売に熱中し始め,家事は家政婦に任せる生活になった.ある日,オリヴァーが商談中に倒れ,入院した.しかし,バーバラは見舞いに行かなかった.夫への愛が冷めてしまったことを自覚したバーバラは,養育権と家の権利譲渡を条件に離婚を切り出した.家を譲ることに我慢がならないオリヴァーは,ギャビンを雇って徹底抗戦."ローズ家の戦争"の火蓋が切って落とされた….

 美しいクロースを大写しにしたカットから映画は幕を開ける.次の瞬間,その布で弁護士が激しく鼻をかむ.ロマンも何もあったものではない.「ロマンシング・ストーン/秘宝の谷」(1984)で結ばれたマイケル・ダグラス(Michael Douglas)とキャスリーン・ターナー(Kathleen Turner)が家の権利をめぐって繰り広げる泥仕合は,毒突く怒号と罵詈雑言の重火器戦.かすがいとなるはずの子も,夫婦の労り合いの記憶もすでに用をなさない.ブラックなドタバタ劇を引き起こすきっかけは,日常な些細な不満の累積だった.そこだけがリアルで,爽快には笑えない.

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原題: THE WAR OF THE ROSES

監督: ダニー・デヴィート

117分 / アメリカ / 1989年

© 1989 Gracie Films,Twentieth Century-Fox Film Corporation