コロンビア大学の入学選考部で部長を務めるルイーズは,39歳.同じ大学の教授であるピーターと離婚し,現在は独身生活.今は良き友人のピーターだが,彼に恋人ができたと知ると,少し心寂しくもある.そんなある日,一通の入学願書が彼女の気を引いた.高校時代に交通事故で亡くなった初恋の彼と,同じ名前だったのだ.その学生と面談したルイーズは,名前ばかりか雰囲気も昔の恋人にそっくりな彼に,一目で恋に落ちる…. |
人によっては,虫唾が走るタイプの映画だ.40寸前の女性という役柄とはいえ,知的で魅惑的なローラ・リニー(Laura Linney)が,15歳年下の青年を籠絡する.甘い言葉と姿態に,青年は抗うはずもない.純真に年上の女性に「よろめき」,免疫のなさから相手にのめり込み,憤慨する.若さへの嫉妬まじりに,大人の論理を知らず知らずのうちに押し付けるヒロインの態度など,すべてが凡庸.
これをフィクションとして片づけるのか,現実の何かを追体験できるかで,大きく印象が変わる.コロンビア大学芸術学部入学選考部部長のルイーズ・ハリントン.同大の理学部教授ピーター・ハリントンと離婚したばかりの39歳である.F.スコット・ファインスタウントの出した一通の入学願書が,ルイーズの眼を引いた.その名は,ハイスクール時代に急逝した恋人と同一だった.
ルイーズは,職権を利用し,個別面接の場にスコットを呼び出す.現れたその青年は,かつての恋人を彷彿とさせる風貌だった.通俗小説的だが,リニーの魅力で凌ぎきる.職権濫用で青年を呼び出した場目の「勝負服」には,呆れを通り越して感嘆すら覚える.別れた夫役のガブリエル・バーン(Gabriel Byrne)の性的倒錯の告白ぶりもインパクトがあった.
年上女性に幻惑されるスコット・ファインスタウントは,野暮ったくてダサすぎる.彼のどこがよいのかまるでわからないが,荒々しく取って「食われる」彼の被害者面は,憐れみすら誘う.その意味では巧かった.ラブ・コメの王道からは程遠く,不惑を迎えようとする女性の「恋愛価値」の確認作業.それに付き合わされた相手のダメージを忖度するに,気の毒なばかりである.
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原題: P.S.
監督: Dylan Kidd
100分/アメリカ/2004年
© 2004 Hart-Sharp Entertainment,Fortissimo Film Sales