▼『不思議な世界』山田太一 編

不思議な世界 (ちくま文庫)

 いま見えているこの世界だけが,すべてなのだろうか.ただつかのまを生きている人間が,現実を承知したつもりで「超自然」を否定することができるのだろうか.オカルト,UFO,臨死体験,ドラッグ,そして日常の中にひそむ人の心の不思議.この世の階段をひとつ踏みはずし,向こう側の世界をかいま見るアンソロジー――.

 仰・啓示・直覚などにより得られる認識は,超自然主義の立場から説明される.理性では説明のつかない事象が,感覚的にとらえられる.

 ラフカディオ・ハーン(Patrick Lafcadio Hearn)を主人公にした『日本の面影』,異界の者と触れ合った一夏を語る『異人たちとの夏』などの幻想性が忘れ難い山田太一による,16名のアンソロジー

 日常の会談を踏み外す「あちら側」への扉は,自然界の法則を超越した非合理,現実に確乎として存在しているはずの人の心の綾がそれぞれ作り出す.16篇はなんら関わり合いを持つものではなく,16名の感度に準拠して述べられている.

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原題: 不思議な世界

著者: 山田太一

ISBN: 4480034242

© 1998 筑摩書房