5年前の抗争を経て,暴力団・山王会は若頭だった加藤が会長の座につき,政界も恐れる巨大組織になっていた.今では大友組の金庫番だった石原が若頭として山王会を牛耳っている.そんな中,刑務所から大友が出所してくる.死んだというのは刑事の片岡が流したニセ情報だったのだ.片岡は山王会に恨みを持つ木村と大友を近づけ,二人を関西の暴力団・花菱会に紹介する.片岡は二人を使って山王会の力を弱めようと画策していた…. |
山本耀司のファッションウィークに招かれた北野武は,山本のデザイン性を「秘められた過激」とコメントした.衣装デザインあるいは監修のフィルモグラフィーに,山本は北野作品以外で名を連ねたことはない.卓越したデザイナーのファッションに――前作「アウトレイジ」(2010)から引き続き――「大友組」元組長大友(ビートたけし)は身を包んでいる.控えめな黒,あるいはグレーを基調としているが,過激のポテンシャルはむしろ増幅されている.
口舌の暴力は前作でも奮発されていたが,それ以上に「殺し」の様態が印象的である.義理人情の為なら不惜身命,という任侠の荒々しさ.そこに一線を画すものは,目先の利益を争う男たちの禍々しさと醜悪さ.それを本作では,数限りない怒声と形相で語り尽くそうとしている.それとの対照性を狙っているのか,殺傷シーンは意外なほど平坦で,単線的な動きでしか魅せ場はない.
マル暴の刑事片岡(小日向文世)の思惑が触媒となり,大友は,関西の花菱会を巻き込んだ巨大抗争に呑まれていく.しかし大友が娑婆に出てこなければ,大渦流は生まれなかった.生存のために鎬を削る世界に,大友は倦み,もう疲れ果てている.かつて「日本侠客伝」(1964)の脚本家笠原和夫は,北野作品のスクリプトには,「強靭さ」が足りないと批判したことがある.
「アウトレイジ」シリーズは,本作で終止符を打つべきだった.第3作(最終章)の弛緩した惰性は,前2作の暴力描写における美意識の均衡を汚すだけで観るに堪えない.本作のファッションの意匠から読み取られるべき「秘められた過激」,さらには組織におけるエイジズムといった要素は,繊細な表現力で描かれるべきものだ.本作は暴力映画のセンシティビティという新しさで,このジャンルに復権を呼びかけているように見える.
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原題: アウトレイジ ビヨンド
監督: 北野武
112分/日本/2012年
© 2012 『アウトレイジ ビヨンド』製作委員会