▼『ラテに感謝!』マイケル・ゲイツ・ギル

ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life―転落エリートの私を救った世界最高の仕事

 全米が泣いた実話のベストセラー.生まれながらのエリートに突然訪れた人生の急降下.偶然働くことになったニューヨークの片隅のスターバックス.そこで出会った,素晴らしい人々と仕事.想像を絶する下降人生の先で,ついに見つけた人生の真の豊かさと,働くことの素晴らしさは,日本人が忘れかけた「大事なもの」――.

 部八大学(アイビーカレッジ)のひとつイェール大学の年間の学費は5万7,000ドル(約600万円).4年間で22万ドルを優に超える.ニューヨーカー誌の著名ライターを父にもち,名門イェール大学を卒業後のマイケル・ゲイツ・ギル(Michael Gates Gill)の35年間,一流広告代理店のJ・ウォルター・トンプソンのクリエイティブ・ディレクターの椅子に象徴される.

 彼に同社を去ることを命じたのは,彼自身が贔屓にし育て上げた30代前半の女性取締役だった.ブルックス・ブラザーズのスーツを身にまとい,T・アンソニーの高級ブリーフケースは手元にある.社会的所属を失っても所有物としての物質は残る.ゲイツ・ギルの場合,家庭内の信頼も失って公私のネットワークは断裂した.流れ着いたように立ち寄ったレックス街78番地のスターバックス.求職者と勘違いされたことが,結果的には彼の明暗を分けた.

 重役SVPにまで上りつめた自分が,スターバックスバリスタになる?IBMクリスチャン・ディオールを取引先に確保するマーケターの勝者であった自分が?健康保険加入ありの条件は魅力的だが,時給10ドル――ブロードウェイのスターバックスでトイレ掃除から始める屈辱を,前向きに軟化できるメンタリティこそ彼の財産だった.成功者であった時代に意に介すこともなかったダイバーシティ(多様性)を,厳しくも人間味溢れる上司と同僚,そしてシアトル系コーヒーを愛する顧客との新鮮なかかわりから学ぶ.

 「信念」「敬意」「心の声」に背かずに,労働を全うする喜びに目覚めたという男の"SAVED MY LIFE".仕事を通じて自分の本質を再発見し,人生に新たな意味を見いだす感動が込められた言葉である.偶発的に価値あるものを発見する「セレンディピティ」の鮮やかさは見事に描かれる.そのうえでの印象をひとつ述べるならば,このタフで生来的に楽天家の人物は,スターバックスに「拾われ」なくとも,自分を生かし,生き抜く術を見つけたはずだ.

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Title: HOW STARBUCKS SAVED MY LIFE

Author: Michael Gates Gill

ISBN: 9784478004852

© 2010 ダイヤモンド社