ベトナム難民のアンディは,実は裏組織の殺し屋稼業を営んでいる.ある日,ビッキーという女性に出会うが,彼女はかつてアンディが殺した男の娘だった…. |
香港映画は,1980年代に国際的な注目を集め,数々の名作が誕生した.その中心には「上海灘」(1980)や「男たちの挽歌」(1986)などの作品で一躍有名になったチョウ・ユンファ(周潤發)の存在があった.ユンファが「亜州影帝」と称されるほどのスター性を持つ前の作品にも,彼の才能の片鱗を見ることができる.ユンファは,その後のキャリアで多くの人々を魅了する演技を披露し続けたが,初期の作品でもその才能は明らかだった.彼の演技には,特に悲しげな表情における繊細さが際立っていた.表情は,彼が演じるキャラクターに深い哀愁をもたらし,観客の心を強く掴む要素となっていた.
初期作を観ると,潜在的なスター性を確かに垣間見ることができる.同じく,ロザマンド・クワン(關之琳)も注目すべき存在である.彼女はこの作品でデビューしたが,その愛くるしい表情と存在感は印象的.彼女の魅力は,作品全体に新鮮な風を吹き込み,デビュー間もないにもかかわらず,その演技には自然な魅力があり,彼女の将来を期待させるものだった.しかし,この作品にはいくつかの欠点もある.特に,恋愛やクライムシーンの描写に関しては,非常に粗雑であると言わざるを得ない.これらの要素は,物語の進行を不自然にし,観客を呆れさせるほどの完成度の低さが目立つ.
感情の起伏や緊張感を期待する観客にとって,これらのシーンは失望を招くだろう.さらに大きな問題点として,広東語の英語吹替とその和訳字幕の品質である.英語の吹替自体が不自然であり,それを日本語に翻訳した字幕には,誤字脱字が多く見受けられる.音声のズレも目立ち,これらの問題は,映画の本来の魅力を大きく損なうものであり,観客にとっては大きなストレスとなる.2011年に本作品はDVDとしてリリースされたが,販売元のラインコミュニケーションズは,これらの問題点を改善したのだろうか.
劇場未公開とはいえ,リリースされるメディアの品質管理は非常に重要である.ユンファの初期作として,本作は彼の才能とスター性を垣間見ることができる貴重な機会を提供する.しかし,ストーリーの完成度や技術的な側面においては,多くの改善の余地がある.初期のファンにとっては,彼の成長を見る楽しみがある一方で,新たにこの作品を観る観客にとっては,品質の低さが目立つかもしれない.それでも,香港映画の歴史に興味のある人々にとっては「亜州影帝」の萌芽的魅力を楽しむ作品として,依然として価値があるだろう.
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原題: 獵頭
監督: リョウ・チン・ハン
90分/香港/1982年
© 1982 Seasonal Film Corporation