▼『不死の人』ホルヘ・ルイス・ボルヘス

不死の人 (白水Uブックス 114 海外小説の誘惑)

 永遠の生命を求めて砂漠の中の不死の人々の都にたどりついた古代ローマの将軍の怪奇な運命‥‥ギリシア・ローマ・バビロニア,現代ドイツ,アルゼンチンなど時間と空間のさまざまな迷宮の中に人間の不条理な生を描くボルヘスの傑作短篇集――.

 現主義やウルトライスモ(超絶主義)など前衛的思潮に影響を受け,仮構性において「迷宮の作家」と称されたホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges)の短篇集.その作家生活で長篇を1つも手掛けることのなかったボルヘスであるが,本書には『伝奇集』に続く傑作が2篇収められている.

 不死の川の水を飲んだため,不死者となった古代ローマの軍司令官が地上を彷徨い続ける(「不死の人」).何の変哲もない民家の地下室に眠る物体“アレフ”.直径2,3cmのその球体には,宇宙空間がそっくり原寸大のままそこにあった(「アレフ」).

 ボルヘスの主題は無限と永遠を造営する「迷宮」であり,無限の観念がモチーフとなり,形而上的に不条理を説く.該博な知識により引用される古今の著作の一節は,ボルヘス文学における時空性の中で一定の脈絡を生み,円環や多義をなし,メタフィクショナルな世界を新たに作り出す.文学的宇宙とは,このような作家によって創造される.

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Title: EL ALEPH

Author: Jorge Luis Borges

ISBN: 9784560071144

© 1996 白水社