▼『地上から消えた動物』ロバート・シルヴァーバーグ

 『不思議の国のアリス』の中にも登場する奇妙な鳥ドードーは人間の胃袋に収まって遂に地上からいなくなってしまった.その他,リョコウバト,クアッガなど人間の手で地上から葬り去られた動物は数知れない.彼らの在りし日の姿と絶滅にいたる物語を,著名なSF作家である著者が埋もれた資料を発掘してつづる――.

 しかった光が翳り始め,ある時フッと消える.その光が地上に再び現れることはない.一つの種族の絶滅とは,まさに地上からその光が召されていくことである.人類が出現する以前にも,動物たちは種族ごとに絶滅を迎えることがあった.ペルム紀末期には海生生物の75~90%が死に絶え,三葉虫は5億年前に姿を消した.しかし,今日の問題は,人間の手による残虐なジェノサイドによって絶滅した動植物の数と,その将来予測にある.

 本書は,ドードー,リョコウバト,クアッガ,ステラーカイギュウ,モア,オオナマケモノなど,地球上から姿を消した動物たちの生態と哀しい運命を詳細に記録した自然誌である.これらの動物たちを滅亡に追いやった人間の行為は,声高に批判されることよりも,かつて栄えた動物の世界が今や変わり果ててしまった現実として描かれている.その描写によって,私たちは切に身につまされる.

 1600年以降に絶滅した哺乳類のうち25%は自然に絶滅したが,残りの75%は人間が直接,または間接に関与している.その75%の内訳は,19%が環境破壊,23%が人間が持ち込んだ外来生物,33%が狩猟によるものである.UCN(国際自然保護連合)の調査によれば,最も絶滅の恐れが高いとされるカテゴリーに,合計で4万5,000種以上の野生生物が記載されている.

 人類もいずれ必ず絶滅するだろうが,それまでにどれほど多くの種が人間の手によって終止符を打たれるかを想像するだけで,暗澹たる気持ちになる.絶滅の自然誌は,失われた動物たちの物語を通じて,人間が引き起こした影響を痛感させるものである.それは単なる過去の出来事ではなく,将来に向かう現実の責任の問題である.

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Title: THE DODO, THE AUK AND THE ORYX

Author: Robert Silverberg

ISBN: 4150500886

© 1983 早川書房