■「プレデター」ジョン・マクティアナン

捕虜となった政府要人を救出するため，南米のジャングルに派遣されたダッチ率いるコマンド部隊．捕虜奪還に向かった彼らに突如何者かが襲いかかる．その手口は残虐非道で，胴体は消え，血痕もなく，内臓だけが残された．ダッチが見た敵の正体――それはカメレオンのように身体の色を変える，宇宙から来た凶悪なプレデターだった…．

　多彩の顔ぶれが揃って，真面目にB級映画を作る．すると，俗っぽさと名作の域に足を片方ずつ突っ込んだ面白い作品になった．機密文書の回収という目的を隠す上層部により，召集されたコマンド隊．圧倒的破壊力を備えた兵器，光の屈折とサーモグラフィの原理を用いた戦闘補具を纏う異星人が，彼らを一人ずつ血祭りに上げていく．閉鎖的な密林での殺し合いに，軍の機密などどうでもよくなる．そんなアバウトさが欠点にならないほど，戦闘描写に全力投球している．

　大体，異星人（プレデター）が何をしたくて地球に飛来してきたか，本編ではまったく明かされない．しかし，「それ」が人類の敵である点だけは明白にされ，屈強な男たちとミリタリーを遥かに凌ぐ存在であることが雄弁に語られる．主観映像と人間側の画策のシーンを交互につないで，緊迫感を高めている．本作の翌年，ジョン・マクティアナン（John McTiernan, John Campbell McTiernan, Jr.）は「ダイ・ハード」（1988）でアクション映画界を席巻した．娯楽作における緊張のスクリプトを撮るのが抜群に巧い．

　ジャン＝クロード・ヴァン・ダム（Jean-Claude Van Damme）が着ぐるみの異星人を演じたと囁かれているが，それは誤り．ただ，キャスティングされて2日間だけ撮影されたというが，丸々お蔵入りとなった．ラストでヘリを操縦しているケヴィン・ピーター・ホール（Kevin Peter Hall）がプレデター役で，二役の出演者．丸太のような「無痛銃」を操るジェシー・ベンチュラ（Jesse "The Body" Ventura）は，プロレスラーで後のミネソタ州知事．スキンヘッドで脳漿を飛び散らせるビル・デューク（Bill Duke）は，「天使にラブ・ソングを2」（1993）の監督でも手腕を見せた．

　最初の犠牲者シェーン・ブラック（Shane Black）といえば，「リーサル・ウェポン」シリーズを嚆矢に数々のアクション映画脚本を手がけた人物．出演者が，妙に豪華なのである．閉鎖空間における怪物との対峙，生存者は捕虜を除けば主人公のみ．「エイリアン」（1979）と同様に「未知」との対決ものの定石を守る．プレデターの素顔は嫌悪をそそる醜悪そのもので，万事休すとみるや迷いなく自爆を敢行するなど同情の余地は皆無．マッチョな筋肉乱舞と怪物の成敗に最大限注力したことが奏功している．映画界に収まらない活躍を見せた多士済済が雑多にぶち込まれた鍋．それが本作である．

プレデター (3枚組)[4K ULTRA HD + 3D + Blu-ray]

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原題： PREDATOR

監督： ジョン・マクティアナン

107分／アメリカ／1987年

© 1987 Twentieth Century Fox