A Fly in the Soup is a book of memoirs. Charles Simic was born in 1938 in Belgrade, Yugoslavia, and spent his childhood in a city bombed by the Nazis in 1941 and then by the Allies in 1944. He was jailed with his mother after the war for trying to flee what was by then a communist country――. |
詩人チャールズ・シミック(Charles Simic)の波乱に満ちた人生の回想録である.1938年にユーゴスラビアのベオグラードで生まれたシミックは,幼少期に第二次世界大戦を経験し,1941年にはナチスによる爆撃,さらに1944年には連合国による空爆にさらされた.戦後,母親と共にユーゴスラビアからの脱出を図ったが,一時は捕えられ投獄された.この出来事は,シミックの詩における「追われる者」「難民」というテーマの根幹を成している.1953年,ようやく移住に成功したシミックは,パリで1年を過ごした後,アメリカへ渡り,ニューヨークで生活を始めた.
興味深いのは,シミックが詩作を始めた経緯である.彼は,移住後に英語を学びながらシカゴの高校を卒業したが,実は英語の詩作を始めたのは,ある文学教師との偶然の出会いがきっかけであったという.この教師がシミックの詩才を見抜き,奨励したことが,後の詩人としてのキャリアにつながった.また,シミックが初めて書いた詩は,戦争中に見た夢についてだったとされ,爆撃や戦争によって歪められた現実が,彼の詩の独特なイメージを形作ったという.本書に収められた作品は,単なる回顧に留まらない.
歴史,都市爆撃,料理,哲学,軍隊生活,映画,戦時中の成長など,幅広いテーマが扱われているが,その背後には彼の体験に根ざした深い洞察がある.年代順に並べられたこれらの作品は,物語,逸話,詩的な断片のコラージュであり,彼の詩的感覚がどのように形成されたかを探る手がかりでもある.シミックは,亡命者としての立場から,自身のアイデンティティと国を失った経験を反映した視点を持ち続け,これは彼の詩における「場所」「記憶」といったテーマの重要性を強調している.
シミックは,後にピューリッツァー賞(詩部門)やマッカーサー・フェローシップを受賞したが,キャリアの初期には詩の出版がほとんど評価されなかった時期もあった.数年間,あらゆる出版社から拒否され続け,詩集を出版してくれた最初の出版社も小さな独立系のものであった.シミックがマッカーサー・フェローシップを受賞した際のエピソードがある.フェローシップの連絡を受けたとき,最初は詐欺と疑った.経済的に困窮していた彼は,突然の巨額の賞金に驚きつつも,それが彼の創作活動に与えた自由と機会の大きさを後に語っている.
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Title: A FLY IN THE SOUP - MEMOIRS
Author: Charles Simic
ISBN: 0472089099
© 2003 Univ of Michigan Pr