This Element contends that regulators can and should shame companies into climate-responsible behavior by publicizing information on corporate contribution to climate change. Drawing on theories of regulatory shaming and environmental disclosure, the Element introduces a "regulatory climate shaming" framework, which utilizes corporate reputational sensitivities and the willingness of stakeholders to hold firms accountable for their actions in the climate crisis context――. |
規制気候シェーミング(Regulatory Climate Shaming)は,企業に対して気候変動への責任を追及する効果的な手法として注目されている.この手法による主張は,企業が環境への影響を公表することを通じて,評判を動機として行動を変えるべきだという点にある.具体的には,規制機関が企業の気候変動への対応に関する情報を公開し,企業に対する社会的圧力を高めることで,気候危機に対してより積極的な行動を促すことが可能であると論じられる.規制気候シェーミングの理論的基盤は,シェーミング理論と環境開示の理論にあり,企業が評判に敏感であることを利用する枠組みとなっている.企業は,ステークホルダーや消費者,投資家の目を気にするため,公表はその行動を改善する動機となるだろう.
政府や規制当局は,企業の気候変動対応に関するランキング,評価,ラベリング,報告,リスト作成,さらにはオンラインデータベースの公開といった多様な手段を用いて情報を共有することで,このプロセスを支援する.この手法は,19世紀の産業革命期に劣悪な労働環境に対する社会的改革運動と共通する要素を持っている.企業名を公表し,社会的非難を引き起こすことで企業に行動を促した成功例は,現代における気候変動対策においても示唆的である.現代の消費者や投資家も企業の社会的責任を重視し,環境問題に対して行動を起こさない企業に対して厳しい目を向けるようになっている.2018年にイギリスのファッションブランドBurberryが売れ残り品の焼却処分を行っていた事実が報じられた際,社会的な批判を受け,方針を転換してリサイクル重視へとシフトした.
このように,企業は社会的な非難に敏感であり,それが行動の変化を促すことが示されている.また,気候シェーミングは国家間でも活用されるようになっている.欧州連合(EU)が2020年に中国に対して行った「グリーン外交」では,気候変動対策を強化するよう圧力をかけることで,中国の政策に変化を促そうとした.これは,国際的な気候変動対応の枠組みの中で,シェーミングが有効な手段となることを示す例である.本書は,気候変動に関する法規制が不十分な状況において,「規制気候シェーミング」がどのように機能しうるかを理論的・実践的に考察する.
他の分野での規制シェーミングの成功事例を参照し,この手法が気候変動対策においても有効である可能性を探る.具体的な事例として,ファッション業界でのシェーミングによる企業行動の変化や,国家間での気候外交におけるシェーミングの役割が挙げられる.一方で,気候シェーミングの導入に際しては,単なる規制の強化ではなく,企業や社会全体の意識を変革する手段としての効果を十分に考慮する必要がある.社会的な期待と評価が,企業が気候変動に対する責任を果たし,持続可能な行動を取る上で重要な役割を果たすことは間違いない.しかし,この手法を適用する際には,慎重な検討とバランスが求められるだろう.
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Title: FIGHTING CLIMATE CHANGE THROUGH SHAMING
Author: Sharon Yadin
ISBN: 1009256262
© 2023 Cambridge University Press