The Power of Myth launched an extraordinary resurgence of interest in Joseph Campbell and his work. A preeminent scholar, writer, and teacher, he has had a profound influence on millions of people—including Star Wars creator George Lucas. To Campbell, mythology was the “song of the universe, the music of the spheres”――. |
ジョセフ・キャンベル(Joseph Campbell)とビル・モイヤーズ(Bill Moyers)の対話を通じて,神話が人類にとっていかに普遍的な役割を果たしてきたかを探求する.キャンベルが提唱する「神話は宇宙の歌であり,天球の音楽である」という主張は,神話が単なる文化的産物ではなく,人類全体に共通する経験と価値観を反映していることを示すものである.古代ギリシャやローマの神々,仏教,ヒンドゥー教,さらにはキリスト教やイスラム教の神話も,根底にあるテーマやシンボルは驚くほど類似している.普遍的な物語構造をキャンベルは「英雄の旅(Hero’s Journey)」として定義した.この構造は,すべての神話が基本的に同じ進行をたどり,個人が自己を超えるための旅路を象徴しているという考えに基づく.
「英雄の旅」は,映画や文学にも影響を与えており,「スター・ウォーズ」シリーズに大きなインスピレーションを与えたことは有名である.キャンベルは「スター・ウォーズ」を観賞した際,「これは現代の神話である」と称賛した.ジョージ・ルーカス(George Lucas)が『千の顔を持つ英雄』を参考にしたことで,映画は神話的な構造を持つ物語となったのである.キャンベルの神話に対する考え方は,単なる過去の伝承や迷信としての神話にとどまらず,現代においても神話が重要な意味を持つことを示している.また,ジョン・レノン(John Winston Ono Lennon)のような現代のカリスマ的人物を例に挙げ,彼らが現代における「英雄像」を体現していると述べている.これは,神話が単なる古代の物語ではなく,今なお現代の文化や価値観に影響を与え続けていることを示している.
「処女懐胎」のテーマがキリスト教だけでなく,エジプト神話やヒンドゥー教,その他の多くの文化にも存在することを指摘し,これが人類に共通する神話的なシンボルであると説明している.このように,神話が文化を超えた「人間の物語」であることを示し,異なる文化間での共通点を見出した.本書の成功に大きく貢献した要因のひとつは,モイヤーズの巧みなインタビューにある.モイヤーズは,質問を通じてキャンベルの思想を明確に引き出し,読者にとって理解しやすい形で提示している.対話は学術的でありながらも親しみやすく,古代の神話と現代の問題が関連づけられ,たとえば結婚や宗教的儀式,さらにはメディアやポップカルチャーにおける神話の役割などが議論されている.これにより,神話の普遍的なテーマがどのように現代の社会や個人の生活に反映されているかが明示されている.
キャンベルは,神話学者としての業績により,学問の世界を超えて多くの人々に影響を与えてきた.本書は,彼の思想を広く一般に知らしめた作品であり,彼の遺産ともいえる.キャンベルの神話論は映画や文学にとどまらず,ビジネス界にも影響を与えている.スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)がキャンベルの「英雄の旅」に感銘を受け,Apple製品のマーケティングに取り入れたことも一例である.キャンベルは,神話が私たちの人生に与える影響を強調し,物語が個人の成長や自己発見において重要な役割を果たすことを示している.彼の考え方は,神話が単なる古代の遺物ではなく,現代においてもなお生き続け,文化や個人の内面に深い影響を与えていることを再確認させるものといえるだろう.
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Title: THE POWER OF MYTH
Author: Joseph Campbell, Bill Moyers
ISBN: 0385418868
© 1991 Anchor