▼"Margins of Conflict" Antoine Buyse [ed.]

Margins of Conflict: The ECHR and Transitions to and from Armed Conflict (Transitional Justice)

 The European Convention on Human Rights was drafted in the wake of World War II. However, the dark shadows of that war have never fully receded from Europe. Armed conflicts have resurged time and again, from Northern Ireland to Cyprus and Turkey, and from the former Yugoslavia to the Caucasus. This book focuses on the margins of conflict - human rights aspects of transitions from peace to armed conflict and vice versa――.

 二次世界大戦の壊滅的な結果を受け,ヨーロッパ諸国はそのような惨劇を繰り返さないため,国際的な枠組みを模索した.1950年に制定されたヨーロッパ人権条約(European Convention on Human Rights)は,その象徴的成果である.この条約は,戦争の悲劇から生まれた人権保護の基盤となり,ヨーロッパの平和と安全を維持するための重要な役割を果たしてきた.しかし,ヨーロッパにおける武力紛争の歴史は,常に条約の適用範囲を試してきた.北アイルランドキプロス,旧ユーゴスラビアカフカスといった地域における紛争は,戦争と人権の緊張関係を浮き彫りにしている.本書は,この緊張関係に焦点を当て,武力紛争の前後における人権問題を徹底的に探求している.紛争の勃発前,武力衝突の兆しが現れたときに,ヨーロッパ人権条約がどのように機能するのか,そして戦後における人権侵害の後処理がどのように行われるのかが主要なテーマである.

 まず,武力紛争が迫る中で,ヨーロッパ人権条約がどのように作用するかを掘り下げる.紛争前に非常事態が宣言されることはよくあるが,国家が個人の自由を制限する場合,条約はその制限を厳格に管理する役割を果たしている.例えば,旧ユーゴスラビア内戦において,表現の自由や移動の自由が制限された際に,どの程度人権が保護されるべきだったかは依然として議論の的である.ヨーロッパの人権史における重要な出来事の一つに,ナポレオン戦争後のウィーン会議(1814-1815年)がある.この会議は戦争後のヨーロッパの安定を目指しており,武力紛争から平和へと移行するための国際的な協力の重要性を初めて強調した.現代のヨーロッパ人権条約も,同様に,紛争から平和への移行を円滑にする役割を担っている.本書のもう一つの重要なテーマは,武力紛争中に犯された人権侵害が戦後にどのように扱われるかである.強制失踪や戦争犯罪に対する法的責任は,紛争後の和解と正義の回復において重要な課題となる.

 アルゼンチンの「失踪者問題」が,ヨーロッパ人権裁判所でも強制失踪の問題を取り扱う際の前例として引用されている.これにより,戦争中に起こった重大な人権侵害が,国際的な文脈でどのように取り扱われるべきかについての新たな視点が提供されている.また,戦後のヨーロッパでは,ナチス政権下で行われたホロコーストの記憶が人権問題に深く影響を与えている.戦争犯罪を裁くための国際的な法的枠組みがこの経験から生まれ,ヨーロッパ人権裁判所の設立に至る道筋を作ったことは,現代の国際法においても重要な教訓である.本書は,ヨーロッパ人権条約の手続き的な側面にも詳細に触れている.条約の適用範囲,非常事態における制限,表現の自由と紛争のエスカレーション,強制失踪に関する国家の義務などが議論されている.さらに,ヨーロッパ人権裁判所の「パイロット判決」にも注目している.この手法は,同様の事件に対して一つの判決を元に他の類似事件を処理するための効率的な方法であり,裁判所が膨大な案件を迅速に処理できるようにする重要な制度である.

 注目すべき事例として,イギリスは「不適切な監禁」に関する裁判所の判決を受け,法律の見直しを余儀なくされたことがある.こうした判決の影響は,ヨーロッパ全体で国家の法制度に直接的な変化をもたらす力を持っており,条約の適用範囲とその限界がどこにあるのかという重要な問題を浮き彫りにしている.以上のように,本書は,武力紛争の前後における人権の役割を多角的に検証し,特にその手続き的側面を通じて,紛争時における人権の限界と可能性について考察する.ヨーロッパ人権裁判所が50周年を迎えた今,紛争への移行やその後の人権問題に対する裁判所の対応がこれまで以上に注目される.本書は,その重要性を再確認させるとともに,現代における人権保護の新たな課題に対して有益な視点を提供する.武力紛争の危機に瀕する現代社会において,どのように人権が維持され,尊重されるべきかについて考える上で,貴重な指針となるだろう.

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Title: MARGINS OF CONFLICT - THE ECHR AND TRANSITIONS TO AND FROM ARMED CONFLICT

Author: Antoine Buyse [ed.]

ISBN: 9400001576

© 2010 Intersentia Uitgevers N V