End of the Earth brings to life the waters of the richest whale feeding grounds in the world, the wandering albatross with its 11-foot wingspan arching through the sky, and the habits of every variety of seal, walrus, petrel, and penguin in the area, all with boundless and contagious inquisitiveness. Magnificently written, the bookevokes an appreciation and sympathy for a region as harsh as it is beautiful――. |
南極という地球上でもっとも過酷で美しい地域を舞台に,そこに生息する動物たちの驚異的な生態と厳粛な風景を描き出した名著である.著者は,精密な観察力と卓越した筆致をもって,南極の鯨の餌場や11フィートもの翼を広げるアルバトロス,セイウチ,アザラシ,ペンギンといった動物たちの生活を余すところなく描写し,彼らの自然との深い共生関係を巧みに表現している.自然の美しさだけでなく,生命の力強さと儚さ,そして現代における気候変動という深刻な問題を鋭く指摘している.南極という環境そのものが特筆すべきである.地球上で最も寒冷な地域であり,1983年にはマイナス89.2℃という史上最低気温が記録されたこの極限環境に適応する動物たちの生態は,驚嘆に値する.皇帝ペンギンは氷点下の過酷な環境の中で卵を抱き,足元で温めながら群れを形成し生存を図っている.
アデリーペンギンやセイウチ,アザラシもまた,この厳しい環境に適応し,氷上や冷たい海中で生活しながら,魚やオキアミといった餌を求めて日々生き抜いている.自然主義者ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau)は,自然との共生や人間の内面探求をテーマに作品を残したが,著者もまた南極の壮大な自然を通じて,人間の存在の儚さや小ささを問いかけている.本書の描写は,自然そのものに対する畏敬の念を感じさせ,読者に自然との深い結びつきとその重要性を再認識させるだろう.南極は地球上で唯一,国際的な合意の下,領有が認められていない場所である.1959年に締結された南極条約によって,南極大陸は科学的研究と平和的目的のためにのみ利用されることが定められている.この条約に基づき,50カ国以上が南極で協力しながら研究を行っており,気候変動に関するデータ収集が重視されている.
南極の氷床には80万年以上にわたる気候の記録が保存されており,その分析は過去の気候変動のパターンや将来の予測に不可欠な情報を提供している.本書の無駄のない,彫刻のような描写は,ただの視覚的な美しさを超えて,自然の厳しさとその中での生存競争を詳細に捉えている.南極の動物たちの生き様は,その過酷さとともに,自然の中でいかに調和して生きているかを示す.とりわけ,南極の生態系において重要な役割を果たしているのがオキアミである.オキアミはクジラやペンギン,アザラシなど,南極の動物たちの主要な食料源であり,その存在が南極の食物連鎖全体を支えている.しかし,近年の温暖化により海水温が上昇し,オキアミの生息域が縮小している現実がある.この変化は南極全体の生態系に波及し,本書が描く南極の生命の逞しさが実は非常に脆いバランスの上に成り立っていることを示している.
南極は地球の気候システムにとって重要な役割を担っており,その氷床の融解は世界中の海面上昇に直結している.もし南極の氷がすべて溶けた場合,海面は約60メートル上昇するとされ,沿岸地域に住む数億人が深刻な影響を受ける可能性がある.したがって,南極の変化は極地の問題にとどまらず,地球全体に関わる重大な課題であることを著者は間接的に伝えている.さらに,南極にはエレバス山という活火山が存在しており,常時噴火を続ける地球上で最も南に位置する火山として知られている.この火山活動により,一部地域には温泉地帯が形成されており,ここには極限環境に適応した微生物が生息している.これらの生物は,南極の厳しい環境でも生命が驚くべき適応力を発揮していることを示しており,本書の描く自然界の逞しさと共鳴している.
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Title: END OF THE EARTH - VOYAGING TO ANTARCTICA
Author: Peter Matthiessen
ISBN: 0792250591
© 2003 National Geographic