Heart-breaking, hopeful and horrifying, I Shall Not Hate is a Palestinian doctor's inspiring account of his extraordinary life, growing up in poverty but determined to treat his patients in Gaza and Israel regardless of their ethnic origin. A London University- and Harvard-trained Palestinian doctor who was born and raised in the Jabalia refugee camp in the Gaza Strip and ‘who has devoted his life to medicine and reconciliation between Israelis and Palestinians' (New York Times), Abuelaish is an infertility specialist who lives in Gaza but works in Israel――. |
ガザ地区のジャバリア難民キャンプで生まれ育った著者は,幼少期に貧困と医療の不足を経験し,それが医師としてのキャリアの原動力となった.本書は,紛争のただ中でいかにして希望を見失わず,人道的使命に従うことができるかを問いかける.著者の人生は,医療を通じた紛争解決と和解の象徴と言える.カイロ大学で医学を学び,その後ロンドン大学で産婦人科学のディプロマを取得し,イスラエルのソロカ病院で研修を受けた.さらにイタリアとベルギーで胎児医学を学び,ハーバード大学で公衆衛生学の修士号を取得するという,多国籍にわたる学問的背景を持っている.経歴そのものが,紛争を超えた知識と共感の架け橋を作り上げている.
ガザ地区で医師として活動し,イスラエルとパレスチナの両方の患者を治療したことにより,医療が民族や宗教を超えた普遍的な価値を持つことを証明し,対立する社会の中で和解の可能性を探る実践者としての姿を見せた.医療が政治的分断を乗り越える力を持っていることを体現しており,その信念が行動を支えている.著者の人生における最大の悲劇である,2009年1月16日にイスラエル軍の砲撃によって3人の娘が犠牲となった事件は,信念を試す最も過酷な瞬間であっただろうか.悲劇にもかかわらず,憎しみや復讐を選ばず,むしろ平和と対話を求める姿勢を崩さなかった.「娘たちが最後の犠牲者であってほしい」というメッセージを発し,世界に向けて平和のための対話を訴えた.
著者の平和活動の一環として設立された"Daughters for Life"財団は,特に女性の教育に焦点を当てている.これは,紛争解決において教育の力を信じていることを反映している.女性の教育が中東地域の未来に不可欠であり,紛争解決や社会の発展に寄与するものだと考えている.この財団は,中東地域の女性たちに奨学金を提供し,教育を通じて新たなリーダーを育成することを目的としている.教育に対する投資は,地域の変革を目指す強い意思を示しており,これもまた医療活動と同様に重要な役割を果たしている.また,著者がイスラエルのベエルシェバにあるソロカ大学医療センターで研修を受けたことは,物理的にも精神的にも「砂の線」を越える存在であったことを象徴しているだろう.
ソロカ大学医療センターはイスラエルとパレスチナ双方の患者を治療しており,医療を通じて和解の可能性を探る場となっている.著者のキャリアは,政治的分断を超えた協力の重要性を示しており,このような医師の存在が紛争地域での共存の可能性を象徴している.個人的な物語がパレスチナ・イスラエル紛争の現実を強調しつつも,読者に普遍的なメッセージを届けるものだ.紛争地域での生活は,常に危険と隣り合わせであり,日常的に直面する困難は数多く存在する.ジャバリア難民キャンプでの彼の幼少期から現在に至るまで,著者はそのような困難を自らの力で乗り越えてきた.この物語は,紛争下における人々の人間性と希望を象徴し,対立を超えて和解を追求することが可能であるという強いメッセージから学ぶ点は多い.
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Title: I SHALL NOT HATE - A GAZA DOCTOR'S JOURNEY ON THE ROAD TO PEACE AND HUMAN DIGNITY
Author: Izzeldin Abuelaish
ISBN: 1408822091
© 2012 Bloomsbury Publishing PLC