Buildings with load-bearing earth walls were once widespread throughout Britain and many thousands still survive, including some dating from the fourteenth and fifteenth centuries. Earth is the ultimate form of 'green' building construction, creating no environmental pollutions and consuming virtually no energy――. |
イギリスでは14世紀から15世紀にかけて土壁建築が普及し,デボン州やコーンウォール地方には,数百年の風雨を耐え抜いてきた農家や納屋が今も残っている.これらの建物がこれほど長持ちする理由は,土が持つ調湿性や断熱性が,室内の居住性を自然に向上させるためである.土壁は湿度の高い夏には涼しさを,寒い冬には保温性を提供し,エネルギー効率も現代のエコ住宅に匹敵する.こうした自然な機能性は,現代の建築技術でも再現が難しい.土壁建築はまた,「グリーン建築」の先駆けだった.建材としての土は,現場の近くから直接採取できるため,製造や輸送にかかるエネルギーがほぼ不要であり,環境負荷も極めて低い.18世紀に煉瓦や石の建材が普及する以前は,広範囲にわたって土壁建築が採用されており,地域に根付いた建築技術であった.
「コッブ(Cob)」と呼ばれる技法は,粘土質の土,砂,藁,水を混ぜて強固な壁を作る方法で,乾燥しても割れにくく,湿気に強い特性を持つ.この技術は,湿潤な気候に適応し,イギリス南部で多く見られる.このような土壁建築は,見た目の素朴さと環境への配慮が共存しており,地域の景観と調和する美しさをもたらしている.本書は,土を建築材料としてどのように取り扱うべきか,現代の建築基準を満たすための方法,修復と保存のための具体的な手順を提示している.土壁建築の技法は世界各地においても古くから広く利用され,各地で異なる発展を遂げている.例えば,中国の福建省にある「土楼」は,数世代にわたる家族が共同生活を送るための集合住宅で,外敵や自然災害から住民を守るための要塞として機能していた.
一方,西アフリカのマリ共和国にある「ジェンネの大モスク」は土の特性を巧みに利用し,地域の高温多湿な気候に適応した建築であり,定期的な再塗装を通じて住民たちが一体となり維持している.さらに,南米のインカ帝国では,ピサック遺跡に見られる土壁の農業テラスが,高山地帯での農業を可能にする重要な役割を果たしていた.これらの建築物は,土の調湿性や断熱性などを巧みに利用し,地域の環境に適応した設計を施している点で共通している.エジプトやメソポタミアの文明でも土は重要な建材として利用され,メソポタミアのジッグラト(階段式ピラミッド)やエジプトのカイロ周辺の伝統的な日干しレンガの建物など,土の特性を活かした建築は多岐にわたる.
これらの建築物は地元の気候に完全に適応しており,例えば日干しレンガは日中の強い日差しを遮り,夜間の寒さから守る効果を発揮する.本書は,こうした伝統的な建築手法が地域の文化,気候,社会といかに密接に関わり合っているかを示している.土壁建築の知見は,地域社会の文化的遺産の保護と,現代の持続可能な建築文化の再評価にも大きく寄与するものだ.現代においても,エコ建築やサステナビリティの考え方はこうした古代の知恵から学ぶ部分が多く,土壁建築の復興は持続可能な未来への道を照らすものとなり得るだろう.
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Title: EARTH BUILDING - METHODS AND MATERIALS, REPAIR AND CONSERVATION
Author: Laurence Keefe
ISBN: 0415323223
© 2005 Routledge