▼"Samuel John LLewellyn Morgan Orchard" Ms Suzanne Helen Orchard, S. Walter Orchard

Samuel John LLewellyn Morgan Orchard: A Short Biography

 This is a true, stirring story of adventure, love and tragedy, recounted mainly through the exquisite letters written by Samuel Orchard. The first part of the book depends on the letters written by Trooper Orchard of the Imperial Yeomanry to his family in Cornwall, during the Second Boer War. Following his service in the war, he returned to Southern Africa and fell in love with Anna Retief, a woman of Boer descent――.

 しい対立と悲劇の中で育まれた物語の中心となるのは,第二次ボーア戦争に従軍したサミュエル・オーチャード(Samuel John LLewellyn Morgan Orchard)が家族に宛てて書き続けた手紙であり,そこには南アフリカの自然,文化,そして地元の女性アンナ・レティーフ(Anna Retief)に惹かれていく姿が描かれている.これらの手紙は,当時の植民地における生活やイギリス人兵士の心の葛藤,異文化の中での自己形成の様子を浮き彫りにしている.サミュエルが従軍した第二次ボーア戦争(1899-1902)は,イギリスと南アフリカボーア人(オランダ系移民)の間で繰り広げられた熾烈な戦争であり,トランスヴァール共和国の金鉱やダイヤモンド鉱山が戦争の原因とされている.イギリスは経済的利権と帝国の拡張を目指し,この戦争に膨大な資源を投入した.

 ボーア人は熟知した土地を利用しゲリラ戦を展開,イギリス軍に対し予想以上の抵抗を見せた.イギリスはその対策として「スコーチドアース政策」(焦土作戦)を採用し,ボーア人の家屋や農場を焼き払うと同時に,多くのボーア人女性や子供を収容所に送った.この収容所での死亡率は高く,歴史的には「世界初の近代的強制収容所」と呼ばれることもある.このような苛烈な戦争政策は,戦後もボーア人のイギリスに対する不信感や敵対感情を残し,サミュエルとボーア人女性アンナとの恋愛を一層困難なものにした.アンナは,ボーア人の英雄的存在であるピート・レティーフ(Piet Retief)と同じ姓を持っていた.レティーフは「大移動」(グレート・トレック)を率いた重要人物であり,ボーア人がイギリスの支配から独立するためのシンボル的存在である.グレート・トレックは,19世紀にボーア人が英領ケープ植民地から離れ,新天地を目指して内陸部に移動した出来事であり,彼らの自己決定と自由の精神を象徴している.

 したがって,ボーア戦争後の南アフリカでイギリス人のサミュエルがこの家系出身のアンナと恋愛関係になることは,ボーア人にとって敵との恋愛に等しく,強い反発を招いたのも無理はない.サミュエルが書いた手紙には,当時のイギリス兵士としての「文明化の使命感」が反映されていると同時に,南アフリカの自然やボーア人の文化に対する驚きと敬意が込められている.ヴィクトリア朝時代のイギリスでは,植民地に対して「未開の土地を文明化する」という思想が根強く存在していた.サミュエルも当初はそのような使命感を持っていたものの,次第に南アフリカに根付いた文化と人々に対する尊敬の念を抱くようになる.手紙には,広大なアフリカの風景,現地の生活習慣,そして彼が出会った人々への深い関心が描写されており,次第にこの異国の地を故郷と感じていく心の変化が感じられる.2人が結婚した北西ローデシアリヴィングストンは,ヴィクトリア滝に近接する地域として探検家や冒険家たちの拠点とされていた.

 モシ・オア・トゥニャ(現地の言葉で「雷鳴の煙」)と呼ばれるヴィクトリア滝は,アフリカの壮大な自然の象徴であり,アフリカ大陸の未知と冒険の象徴として多くの西洋人を惹きつけた.この地でサミュエルとアンナは,異文化間の愛を祝う象徴的な結婚を果たしたが,彼らの幸福な生活は無情にも短命に終わる.本書は,サミュエルとアンナの愛の物語を通じて,イギリス人とボーア人の間に横たわる複雑な歴史,南アフリカの民族的・文化的背景,そして異なる文化を越えた絆の可能性を探る視点を提示している.この物語は,当時のイギリスと南アフリカの対立を象徴すると同時に,異文化間の理解と共存の難しさを問いかけるものである.サミュエルの手紙は,戦争という苛烈な経験と異文化との接触を経て,イギリス人としてのアイデンティティを超え,異国の地で新たな自己を見出すまでの過程を浮かび上がらせる.

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Title: SAMUEL JOHN LLEWELLYN MORGAN ORCHARD - A SHORT BIOGRAPHY

Author: Ms Suzanne Helen Orchard, S. Walter Orchard

ISBN: 979-8656836371

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