| 時は1931年,大恐慌の真っ只中のアメリカ.アイルランド系ギャングの殺し屋マイケル・サリヴァンは,父親のような存在のルーニーの片腕として働いていた.しかし,12歳の長男がルーニーの息子の殺しの現場を目撃したことから,妻と次男が殺害される.生き残った父と息子は復讐と救済を求めてシカゴに旅立つが,ルーニーは実の息子の犯した罪に気付きながらも,残虐な殺し屋マグワイアに後を追わせる…. |
監督デビュー作「アメリカン・ビューティー」(1999)で成功を収めたサム・メンデス(Samuel Alexander Mendes)は,ハリウッドの寵児となり,あらゆる脚本を送りつけられた.マックス・アラン・コリンズ(Max Allan Collins)によるグラフィックノベル"Road To Perdition"映像化に惹かれたのは,冗長な脚本の真逆だったからである.映画化にあたって,ストーリーやキャラクターの設定が大幅に改変された.原作では復讐劇としての要素がより強調されているが,映画では父子関係と暴力の連鎖の克服が中心テーマとして描かれている.メンデスは,原作の復讐劇のトーンを和らげ,感情的な深みを加えた作品へと昇華させた.トム・ハンクス(Thomas Jeffrey "Tom" Hanks)は,それまで善良な役柄が多く,殺し屋というダークな役柄は意外性があった.
メンデスは観客がトム・ハンクスに共感を寄せやすい点が,複雑なキャラクターを成立させる鍵になると考えた.一方で,ポール・ニューマン(Paul Leonard Newman)キャリア最後の映画出演となった.ジュード・ロウ(Jude Law)は役のために歯を意図的に汚く見せる特殊メイクを施したり,不気味さを際立たせるために身体的な動きに異様な癖を取り入れたりするなど,キャラクターの不気味さを徹底的に追求した.ロウは美男子のイメージを壊すことに挑戦したと語っている.撮影のコンラッド・L・ホール(Conrad L. Hall)が手掛けた手法は,雨の降る中で暗殺者の姿を影としてのみ描き,観客の想像力を喚起する.この演出は,古典的なフィルム・ノワールへのオマージュで現代的な視覚表現を狙ったものであるが,印象は薄い.
トーマス・ニューマン(Thomas Newman)の音楽は,映画の感情的な核を形成するために,アイリッシュハープや弦楽器を効果的に活用した.父子の絆を描いたシーンで流れる楽曲は,単に感動を狙うものでしかない.製作された2002年という時代の文脈でいえば,9.11の直後にアメリカ社会が抱えていた喪失感や再生への願望が,暴力の連鎖を断ち切り,新たな希望を見出そうとする物語は,当時の観客にとってある種の共感を呼び起こした.父子関係を通じて過去の遺産を乗り越えるテーマは,個人的なレベルだけでなく,社会的な次元でも意味を持つものだった.父サリヴァンが息子ジュニアに残した遺産は,暴力ではなく愛であり,その愛が新たな未来を切り拓く可能性をアメリカ的に象徴している.暗殺者マグワイアの犯罪現場写真は,報道写真家アーサー・フェリグ(Arthur H. Fellig)の作品に基づいている.
フェリグは,警察に賄賂を渡して犯罪や交通事故の情報を聞き出し,現場に一番乗りして写真を撮らせ,撮影写真をタブロイド紙に売っていた.マグワイアのアパートにある写真は,1930年代の犯罪現場の実際の写真である.衣装デザイナーのアルバート・ウォルスキー(Albert Wolsky)は,1930年代の衣装を見つけるのに苦労した.当時は大恐慌の真っ只中だったため,ファッションには1920年代のような華やかさはなく,現存する素材も希少となっていた.実際の衣装を見つけられなかったが,幸運にもニューヨーク州北部の織工の協力を得た.その織工は,当時の衣服と同じ重さの生地を使って,必要な衣装をすべて作ってくれた.織った衣装は,その後,熟成させて染めなければならなかったという.本作の原作は,小池一夫の漫画「子連れ狼」に対するオマージュである.小説の冒頭で「自分の道は自分で選ばなければならない」という言葉を引用している.
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原題: ROAD TO PERDITION
監督: サム・メンデス
119分/アメリカ/2002年
© 2002 Dreamworks LLC
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