■「マッチ工場の少女」アキ・カウリスマキ

罪と罰 白夜のラスコーリニコフ/マッチ工場の少女 HDニューマスター版(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [DVD]

 フィンランドの田舎町のマッチ工場で働く少女イリス.彼女は稼いだわずかな金で母と義父を養っていた.ある日,もらったばかりの給料で衝動的にドレスを買ってしまう.怒った義父に殴られ,母に返金を命じられたイリスは,とうとう家を飛び出し,買ったドレスを着てディスコへ向かう.そこで出会った男性と一夜を共にするが,イリスは彼にも裏切られ….

 潔な映画言語と苦いユーモアを用いて,愛のない環境で全うな人生を送ることは不可能であることを映し出す.アキ・カウリスマキ(Aki Kaurismäki)は,孤独と抑圧に絶望する労働者階級の寓話として苦く,邪悪な物語を展開する.重苦しい緊張感は,人間存在の喪失についての濃密な教訓を表し,禁欲主義の美学を極限まで追求する.本作には脱線や中断がなく,すべてが必要不可欠な要素として統合されている.一つ一つのショットがストーリーを語り,それ自体が象徴的な意味を持つものだ.マッチ工場の少女イリスは幸福を求めてさまようが,人々の冷たさに打ちのめされる.結局,イリスは自身の苦しみを和らげるために両親と誘惑者に報復する.物語は極めて簡素でありながら,その背後には深い洞察と哲学的考察が込められている.カウリスマキの他のすべての映画においても,登場人物は一様に無表情である.その眼差しには,世界に対する倦怠と,存在の虚無が宿る.

 フィンランドの現実がそのまま映し出されているわけではないが,カウリスマキが構築する北欧社会において,人々は存在の壁を見つめ,静かに絶望している.ブルーカラー労働者のイリスは,マッチ工場の流れ作業の中で黙々と働き,日々,貼られたラベルをチェックする.家ではさらに厳しい現実が待っている.搾取的な母と義父と暮らし,家賃を払わされながら召使のように扱われる.イリスの生活に小さな変化が訪れるのは,新しい赤いドレスを着てダンスに出かけたときだ.そこで見知らぬ男の関心を引き,一夜を共にする.しかし翌朝,男は去り,彼女への関心が一切ないことが明らかになる.男の冷淡な態度に直面し,再び接触を試みるも拒絶される.そして,彼女は自分が妊娠したことを知る.周囲のすべての人々から冷遇されたイリスは,ついに復讐に転じる.極端に誇張された陰鬱さは,喜劇と紙一重である.しかし,その笑いはかすかに存在するだけで,映画全体の厳粛で重厚な雰囲気を損なうことはない.

 観客に迎合することを一切せず,むしろ異様な静寂と優雅な開き直りを感じさせる.カウリスマキの映画において,喜劇と悲劇は言葉の定義の問題でしかない.ミニマリズムの極致として,わずか70分の上映時間の中で,対話を極限まで削ぎ落とし,強烈な物語性を築き上げている.カウリスマキの映像は,物理的には無駄がないが,不安を煽る演出によって強く記憶に刻まれる.カメラは時に長く留まり,時に唐突にカットし,些細なものを前景に配置する.その独特のリズムと焦点のズレが,観客の安易な感情移入を許さない.ダークなユーモアを駆使して,社会の歪みと人間の孤独を浮かび上がらせる物語は,閉ざされた世界の中で繰り広げられる.映画内では天安門事件の映像が流れるが,イリスはそれを意識することなく,自身の絶望の中に沈む.この対比は,私たちが生きる個人世界を強調する.誰もが自らの問題に囚われ,それ以外の世界に目を向けることができない.しかし,その小さな世界の苦悩が,個人にとっては決定的な意味を持つ.

 極端に抑制された演出の中に,奇妙なユーモアと皮肉が息づいている.イリスが殺鼠剤を求める場面で,店員が「小さいのか,大きいのか」と尋ねるシーンは,失笑を誘う.物語の展開は静かでありながら,突然観客に衝撃を与える瞬間が訪れる.それはまるで,何気ない日常の中で突如として強烈な出来事が起こるかのようである.カウリスマキ自身は本作を「労働者階級の復讐劇」と称しつつも,過度に深刻に受け取られることを望んでいないようである.彼の作品群には常に,冷酷な現実の奥底に,反骨精神とユーモアが隠されている.冷徹にして美しく,悲劇的でありながら笑いを誘う,まさにカウリスマキの美学が凝縮された一作である.この映画のストーリーは,ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の童話「マッチ売りの少女」,フィンランドの作家アンニ・スヴァン(Anni Swan)『イリスのルッカ』にインスピレーションを得ている.小説のタイトルが"かわいそうなイリス"を意味することから,イリスという名前は小説への言及であり,言葉遊びでもある.

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原題: TULITIKKUTEHTAAN TYTTO

監督: アキ・カウリスマキ

70分/フィンランド/1990年

© 1990 Villealfa OY