| 都会生活に疲れ果て生まれ故郷で田舎暮らしを始めた中年の画家.何年も放置された庭を手入れするため庭師を雇うことに.その求人広告を見てやって来たのは,なんと小学校時代の同級生だった.仕事への情熱を失い,離婚調停中の画家とは対照的に,地元に腰を落ち着け,勤めていた国鉄を退職し,念願の庭師の仕事を始めた彼は,愛する家族たちと慎ましくも満ち足りた生活を送っていた…. |
都会的知識人と素朴な労働者の対話を通じて人生の本質を探る物語は,「イル・ポスティーノ」(1994),「その男ゾルバ」(1964)などの系譜に連なり,ジャン・ベッケル(Jean Becker)は,父親ジャック・ベッケル(Jacques Becker)のような社会階層を描く作風を継承している.物語の中心をなすのは,離婚を機に田舎の家に戻ったパリの画家デュパンソーに庭師として雇われた元鉄道員デュジャルダンの交流である.幼少期の同級生という過去を持つ2人は,愛称で呼び合いながら,互いの価値観を共有していく.
教養人で都会的なデュパンソーが,労働者階級のデュジャルダンの視点を通して人生の真髄に気づいていく構図は,類型的でありながらも滋味をもって描かれている.本作の魅力は,主演2人の演技力にある.元鉄道員を演じたジャン=ピエール・ダルッサン(Jean-Pierre Darroussin)の自然体の演技は際立っており,1960年代のプロレタリア左翼に近い立場の協同組合などで,活動したキャリアが演技に生かされている.知的な画家を演じたダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)の存在感は確かで,脚本はユーモアを散りばめつつも,人生の閉じ方を静かに問いかける深みを持ち合わせている.
一方で,知識人と労働者の対比が過剰にデフォルメされており,労働者階級の素朴な知恵が知識人の空虚さを補完するという図式は陳腐ともいえる.この点について対比そのものよりも友情のリアリズムが見てとれるが,観客によっては反動的イデオロギーとも受け取られかねない.演出は視覚的華やかさよりも会話劇としての完成度を重視しており,映像的工夫は抑制的である.もちろん意図的な選択であり,本作の本質は老いゆく2人の対話そのものにある.フランス映画の伝統「質の高い会話劇」の系譜に位置づけられる作品といえるだろう.
フランス国内でジャン・ベッケルは観客には支持されながらも批評家からは厳しい評価を受けることが多く,本作もその傾向を反映している.批評的にはステレオタイプな人物造形や思想的な単純さが指摘されうるが,俳優の卓越した演技によって観る者に豊かな時間を提供する.人生の価値をシンプルな言葉で語る誠実な作品である.時に予定調和に陥ることはあるものの,ハリウッド映画のような過剰な感傷を避け,フランス映画らしい抑制された感情表現と対話に耳を傾ける限り,映画の魅力は十分に伝わるだろう.
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原題: DIALOGUE AVEC MON JARDINIER
監督: ジャン・ベッケル
105分/フランス/2007年
© 2007 ICE 3 - KJB PRODUCTION - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - RHONE - ALPES CINEMA - WISEPOLICY
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