■「リベリオン 反逆者」カート・ウィマー

リベリオン-反逆者- [Blu-ray]

 第三次大戦後の世界.絶対的な警察国家は,国民に強烈な精神抑制剤プロジアムを服用させ,絵画や映画,詩集,音楽を奪い取り,違反するものは有無を言わさず処刑してきた.感情犯罪取締官(クラリック=聖職者)のプレストンは,国家のために忠実に任務を遂行していったが,反乱者メアリーの逮捕をきっかけに,感情を取り締ることに疑問を抱き始める….

 覚的なスタイルは「マトリックス」(1999)に似ているが,テーマはより明確に「無感覚」「検閲」に焦点を当てている.2072年,第三次世界大戦後の管理社会リブリア.感情を持つことが罪とされ,政府は人々にプロジウムという薬を強制的に投与し,感情を抑制している.芸術や音楽,文学は全て焚書され,感情を抱いた者は「感情犯罪者」として処刑される.このディストピアを統治するテトラグラマトン評議会の執行官(クラリック)が違反者を取り締まる.本作の最大の特徴的な要素ガン=カタ(Gun-Kata)は,東洋武術と銃撃戦を融合させた架空の戦闘スタイルで,確率論に基づいて最も効率的に敵を殲滅する技術として設定されている.クラリックたちはこの戦術を極め,銃弾を最小限に抑えつつ多数の敵を制圧することができる.

 戦闘スタイルは「マトリックス」のワイヤーアクション,「ジョン・ウィック」(2014)のガンフーに通じる要素があり,視覚的な美しさと機能性を兼ね備える.聖職者プレストンが暗闇の中で多数の敵を一瞬で殲滅するシーンは,映画史に残る名アクションのひとつかもしれない.撮影は主にドイツで行われ,ベルリン・オリンピアシュタディオン,テンペルホーフ空港などナチス時代の権威主義的建築がロケ地として使用された.地下鉄の建設現場,旧東ベルリンの団地といった現代的なロケーションも用いられ,リブリアの無機質で抑圧的な世界観が強調され,未来都市の雰囲気を醸し出している.ロケーション選定は,ナチス政権のプロパガンダ建築と管理社会のイメージを直結させる巧妙な演出であり,視覚的に強烈な印象を残す.プレストンを演じるクリスチャン・ベール(Christian Bale)は,「アメリカン・サイコ」(2000)のサイコキラー,ベイトマン役で見せた冷徹な演技を本作でも遺憾なく発揮している.

 序盤の無感情な状態から,次第に人間味を取り戻していく過程は,細やかな表情の変化によって説得力を増している.物語はオーソドックスなディストピアものの枠を超えず,演出面では一部の粗さが指摘されることもあるが,徹底的に様式美を追求した演出は見応えがある.プレストンが《モナ・リザ》を焼却するシーンは,破壊的カタルシスではなく,芸術を抹消する全体主義への痛烈な批判となっている.感情を取戻したプレストンは,ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)《交響曲第9番》を聴いて涙を流す.「時計じかけのオレンジ」(1971)における音楽の役割とも比較されることがあり,暴力と芸術の関係性を考察する上でも示唆に富んでいる.公開当時こそ評価が分かれたが,アクション映画としての完成度の高さ,管理社会への警鐘という普遍的なテーマによって,後に熱狂的なカルト的人気を獲得した.20世紀の独裁政権や21世紀の監視社会の発展を考えると,本作の描く管理体制は決して荒唐無稽なものではない.

 全体主義が自由を抑圧する世界はフィクションの中だけの話ではなく,歴史的にも現代社会にもみられるテーゼである一方,プレストンが革命を成功させる描写には賛否がある.ディストピア作品の多くは絶望的な結末を迎えることが多いが,本作はアクション映画としてのカタルシスを重視し,英雄が体制を打倒する結末を選んでいる.この点で,本作はハードなディストピア作品というよりも,英雄譚としての爽快性を追求している.クラリックが使用する拳銃は,ベレッタ92Fをフルオート射撃に改造したものである.銃身を長くスライドを改良,トップポートから薬莢を排出し,銃身にコンペンセイターを追加するなど,他の多くの改造も施された.プレストンはこの映画で118人を殺しており,これは合計236人の死者のちょうど半分を占めている.デュポンのオフィスの壁に飾られている絵はピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)《戦争の惨禍》.プロジウムという薬は製作初期にはリブリウムという名前だった.しかし,リブリウムは抗不安薬クロルジアゼポキシドの登録商標であることが判明したため,プロジウムに名称変更された.

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原題: EQUILIBRIUM

監督: カート・ウィマー

106分/アメリカ/2002年

© 2002 MIRAMAX FILM CORP.