| プレーオフを前に連敗続きのアメフト・チーム,マイアミ・シャークス.ヘッドコーチのダマトは,今にも崩壊しそうなチームをなんとか立て直そうとする.だが,アメフトをビジネスと考える若き女性オーナーのクリスティーナは,勝てないチームを許さず,ダマトに契約解消の最終通告を言い渡す…. |
戦争,メディア,政治といった国家や制度における暴力性を,本作ではアメリカン・フットボールという舞台に移し替え,アメリカ社会の構造的な分断をダイナミックに描く.旧世代と新世代,白人支配と黒人アスリートの複層的な対立軸を内包した,アメリカ社会の縮図である.オリヴァー・ストーン(Oliver Stone)は老練の名将ダマトをアメリカの父性,ウィリーを黒人アスリートが象徴する個人主義として描き出し,対話と衝突を通して文化的・人種的階層構造を映し出している.ウィリー役に選ばれたジェイミー・フォックス(Jamie Foxx)は,自身のアメフト経験と音楽的なテンポ感が役に馴染んだ.NFLは本作への協力を拒否した.本作はリーグが隠蔽してきた薬物依存,商業主義の暴走,人種間対立といったタブーを描き出すからである.
結果的に架空のチーム名とリーグ名を使用することになったが,それがかえって検閲から解放し,本来の暴露的手法を最大限に発揮させることとなった.演出面においても,ストーンは従来のスポーツ映画の文法を意図的に破壊している.異なるフィルムを混在させ,過去の名選手の実映像やテレビ放送の挿入を多用することで,記憶の断片やメディアの洪水の中に観客を引き込む映像体験を創出している.その目まぐるしさは試合のスピード感というより,アメリカ資本主義社会における情報と欲望の加速というほかない.カオスな編集は,意図的なメディア批判なのである.豪華な俳優陣も本作の強みである.アル・パチーノ(Al Pacino)演じるダマトは怒号と圧倒的な存在感,スーパーボウル制覇を2度経験したローレンス・テイラー(Lawrence Taylor)は,引退を拒むベテランLBを説得力ある形で演じている.
即興的な台詞は演技というより告白に近い重みを持ち,フィクションをアメフト史への言及へと昇華させている.唯一の難点を挙げるとすれば,キャメロン・ディアス(Cameron Diaz)演じる女性オーナーの造形だろう.新自由主義の象徴としての役割は明確だが,その一面的な描写は戯画的であり,複雑な動機やビジネス倫理の葛藤が描かれていない.女性キャラクターが性的に消費される傾向も見られ,ストーンの旧態依然としたジェンダー観が露呈している.それでも,物語終盤でダマトとウィリーが互いを理解し始める展開には,感動を超えた含意がある.ダマトが次のチームにウィリーを引き抜くラストシーンは,信頼の再構築という物語の帰結である.血を流し,消費され,変貌するプレーヤーを汗と怒号と絶望の中に捉えた,ある種の黙示録である.
NFLが映画への協力を一切拒否したため,代わりに使用された架空のリーグは,ワールド・フットボール・リーグとユナイテッド・ステイツ・フットボール・リーグである.それぞれ1970年代と1980年代にNFLに挑戦したが,長くは続かなかった.脚本では,マイアミ市長がマイアミ・シャークスの新オーナーに,市が新しいスタジアムを建設する余裕がない理由の1つは,マイアミ・ドルフィンズが地元で有名だからだと告げる.ウィリーがダマトの家に入ると,テレビで放映されている映画はチャールトン・ヘストン(Charlton Heston)主演「ベン・ハー」(1959)で,本作でもコミッショナー役で出演している.ストーンは解説で,メタ的なつながりは意図的で,昨日の反逆者が体制側になることを示すためだったと述べている.
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原題: ANY GIVEN SUNDAY
監督: オリヴァー・ストーン
164分/アメリカ/1999年
© 1999 Warner Brothers
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