| 胸元も露(あらわ)に超ミニのスカートでキメた元ミス・ウィチタ.離婚歴2回.3人の子持ち.無学,無職.貯金残高16ドル.そんな彼女が1枚の書類から大企業の環境汚染を暴き,634の住人の署名を集め,史上最高の和解金350億円を勝ち取り,アメリカ中にスカッとした感動をもたらした…. |
企業による地下水汚染が巨額の公害賠償金に発展した事件──PG&E社によるカリフォルニア州ヒンクリーの六価クロム汚染──を題材とした実録ドラマである.化学工場の冷却塔に使用された六価クロムは,人体に取り込まれるとDNAを損傷し,肺癌や肝障害を引き起こす毒性の強い化合物である.PG&E社は10年以上にわたり,この物質を廃液として地下に垂れ流し,地域の井戸水を汚染し続けた.皮膚疾患や癌の多発によって事件は発覚し,最終的に同社は3億3300万ドルという前例のない賠償金を支払い,和解に至った.
この金額は当時のアメリカ史上最高額の集団訴訟和解金となり,公害訴訟の象徴として記憶されている.製作のきっかけは偶然の出会いにあった.エグゼクティブ・プロデューサーのカーラ・サントス・シャンバーグ(Carla Santos Shamberg)は,エリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich)と同じカイロプラクターに通っていたことからその存在を知る.スティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)は,「セックスと嘘とビデオテープ」(1989)以来,女性の視点と内的強度を描くことに関心を抱いていた.
「アウト・オブ・サイト」(1998)で培った軽やかなテンポとリズムを活かしつつ,労働者階級の勝利を過剰なヒロイズムに陥らせることなく描き出す演出は抑制的でありながら,ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)の熱演によって,平凡な日常が奇跡へと転化する瞬間が生まれている.ロバーツが演じるブロコビッチは,露出の多い服装と毒舌という挑発的な言動の背後に,貧困と偏見への防御としての鎧を纏っている.その身体表現として,声のトーンを低く抑え,しばしば咳払いする演技には,ブロコビッチ本人が六価クロムの影響で体調を崩していたという現実が反映されている.
撮影時には,ブロコビッチ本人がウェイトレス役でカメオ出演し,訴訟を担当した判事までもが実名で登場している.印象的なのは,PG&E社の弁護士がコップの水を前にして飲むことをためらう場面である.映画的な演出に見えるこの一幕は,実際の法廷で本当に起きた出来事に基づいている.ソダーバーグはその緊張を忠実に再現しつつ,社会的リアリズムと人間的尊厳の融和により,被害者たちを「立ち上がる人々」として描くことに力点を置いた.貧困と3度の離婚を経験し,高卒の学歴しか持たぬ一人の女性が,巨大企業を法廷で追い詰めた事実に,新しい時代のヒロイン像を見出したのである.
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原題: ERIN BROCKOVICH
監督: スティーヴン・ソダーバーグ
131分/アメリカ/2000年
© 2000 Universal City Studios, Inc. and Palisade Investors, LLC.
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