| リーリング家は,平凡な中流家庭の一家.ある夜,末娘のキャロル・アンが,放送終了後のTV画面に話しかけ始める.この日を境に,一家の生活は恐怖に変わっていく.長男は動き出した庭木に襲われ,末娘はTVの向こうの超常世界に引き込まれてしまい――娘を救出しようとする家族に,姿なき亡霊たちが襲いかかる…. |
前半と後半で印象が大きく異なる映画である.表向きはトビー・フーパー(Tobe Hooper)監督作であるが,本作を語るにはスティーブン・スピルバーグ(Steven Allan Spielberg)の存在を無視できない.スピルバーグが製作と物語構想に深く関わり,当時並行して「E.T.」(1982)の準備を進めていたことが,本作のトーンの分裂を生んだといわれている.結果として,前半のSFめいた柔らかい不安と,後半のスペクタクル志向のホラーとが同一作品の中でぶつかり合う構図が生まれたのである.
前半は「日常の裂け目」を丁寧に見せる.郊外の理想的な住宅や家庭の細部を描き出すことで,そこに忍び寄る異常が際立つ.幼い少女とテレビの対話を介した不可解なコミュニケーションは,初期のSF的発想に近い趣がある.家族へのまなざしと,子どもの視点から世界を見せるスピルバーグ的手法が強く現れている."They're here."という少女の台詞は以後のホラー作品に影響を与えたフレーズとなり,メディアと超常の交差点を象徴する短い言葉として記憶されている.
一方で後半は,幽霊群と家族が正面衝突するホラー大作へと転換する.特殊効果とセットの過剰さがむしろ作品の推進力となり,ユニバーサルのアトラクションを想起させるような誇張されたオブジェクト群は賛否を呼ぶが,映画的サービス精神としては十分に機能している.特殊効果チームの工夫が随所に光り,恐怖の具現化に寄与している点は見事.ただし人物描写とドラマの繋がりという面では,前半で丁寧に描かれたキャラクターの性格や細やかな人間関係が,後半の大仕掛けな展開と一枚岩で結びつかない.
物語全体としての統一感が薄れ,観客の感情的な没入を阻害する場面が散見される.家族愛を武器にする後半の盛り上がりが,前半で積み上げた人間描写と有機的に接合していないのだ.なお,本作はシリーズ化され続編が次々に作られた一方で,いわゆる「呪われた映画」としての都市伝説も生んだ.若い出演者の早逝や異常な出来事が重なったためだが,これらは因果関係の証明されない偶然の重なりにすぎない.とはいえ,その噂が本作の神話性を高め,ホラー文化の語り草となったことも事実である.
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原題: POLTERGEIST
監督: トビー・フーパー
115分/アメリカ/1982年
© 1982 Warner Bros. Ent.
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