| ハーバード大学法学部に通う大富豪の御曹司オリバーとラドクリフ女子大音楽部に通うイタリア系移民の娘ジェニーは,育ってきた環境の違いから決して相性がぴったりというわけではないが,お互いに対する恋愛感情を無視できずにいた.裕福な父にジェニーと結婚するなら勘当すると言われたオリバーは,父の援助を受けず結婚することを選ぶ.しかし,二人だけの力で新生活を築き上げ生きていこうとする彼らを,残酷な悲劇が襲う…. |
アメリカン・ニューシネマが反体制のエネルギーを失い,メインストリームへと徐々に回収されていく過渡期に生まれた作品である.若い男女が出会い,恋に落ち,階級や家柄への反発を梃子にして結婚へ突き進む物語は,一見すれば保守的な純愛に見える.時代背景を踏まえれば,本作は制度の外側へ出ようとする若者の意地と,庶民的なロマンティシズムが奇妙に混ざり合っているように思える.
海の波が寄せては返すように,人はいつの時代にも純愛の物語を求める.2人が抱く純愛への信仰は,同時代のシニシズムを背景にすることで,より強いコントラストを帯びている.パラマウントがこの作品で狙ったのは,ニューシネマの退潮期における,観客の感情移入と涙腺への回路の再確立だった.また,当時の若者文化をさりげなく織り込むという狙いもあった.アイビーリーグ特有のプレッピー・ルック――ウールのピーコートやタートルネック,落ち着いたカラーリングの冬服――は,オリバーとジェニーの装いにも色濃く反映され,当時の若者の生きた時代記号であるかのようだ.
冬のボストンの情景,若すぎる二人の純愛――その連関が悲劇的結末をいっそう際立たせる.オリバーとジェニーの姿を眩しく見せる要因の一つは,祭壇での誓い「死が二人を分かつまで」が,階級を突き破る新しい倫理宣言として響く点にある.本作の最も有名な言葉「愛とは決して後悔しないことよ」.時に陳腐とさえ評されるが,メッセージとしての強度は今なお捨て難い.混沌とした世界にあって,ただ一人の相手に向けて放つ信頼――その崇高さこそ,本作の持続的魅力なのだ.製作の裏側にも注目すべき逸話が多い.
主演の2人はいずれも当時の映画界の新人であって,ライアン・オニール(Ryan O'Neal)は,多くの俳優が出演を拒んだ後に,わずか2万5,000ドルという低ギャラで抜擢された.後年の私生活の乱れとは裏腹に,本作での清潔感は,いま見ても役柄に嵌った要素となっている.オリバーのルームメイトとして2シーンだけ登場する若き日のトミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)の映画デビュー作である.ハーバードの卒業生であり,寮生活の描写が妙に自然なのはそのためだが,パラマウント上層部には「顔つきがキツい」と難癖をつけられたという.
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原題: LOVE STORY
監督: アーサー・ヒラー
100分/アメリカ/1970年
© 1970 Love Story Company, Paramount Pictures
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