| フロリダのストリップ・バーで働くエリンは,元FBIという経歴を持つ人気ストリッパー.そんなある日,彼女の熱狂的ファンが死体で湖に浮かんだ.実はエリンのため,店に通っていた下院議員ディルベックをゆすろうとしたため殺されたのだ.事件解明のため,彼女はひと肌脱ごうとするのだが…. |
扇情的な邦題に引きずられてはならない作品である――と言いたいところだが,結論から言えば,引きずられたまま底まで落ちていく映画である.ストリッパーがFBIの元秘書という設定は,脚本上まったく機能していない.知的職歴の転落を描くわけでもなければ,経験が物語の推進力になることもない.装飾としての肩書は,観客の誤解を誘う安易なフックに過ぎないのである.
主人公エリンが「ストリッパーではなくダンサーだ」と言い張るプライドも,物語上の倫理的緊張や社会的対立を生み出すことはない.その言葉は自己正当化の独白として宙に浮き,職業差別を批評する装置にもなっていない.ストリップ稼業を「親権を守るための健気な選択」として描こうとしながら,その選択に伴う葛藤や代償を一切掘り下げない.その軽薄さこそが,最大の問題点である.離婚訴訟中の夫は,病院から身体障害者用車椅子を盗む救いようのない人物として描かれるが,極端な反道徳は,エリンを相対的に正しい側に見せるための記号にすぎない.
同様に,彼女に執着する下院議員ディルベックの変態性,食品会社を恐喝するためにヨーグルトへゴキブリを仕込む用心棒シャドなど,登場人物の多くは戯画化された愚者で占められている.結果として,この世界には倫理も常識も存在せず,観客は誰にも共感できないまま,ただ騒音のような人物配置を眺めることになる.致命的なのは,母と娘の関係性である.娘の親権を守るためという大義名分のもと,エリンはストリップという職業にあっけらかんと充足を見出している.ついには娘にステージ上の姿を目撃されても動じない描写は,「自立した女性像」として擁護されがちだが,養育責任や子どもの心理への想像力が完全に欠落している.
価値観の転倒というより思考停止に近い.主演のデミ・ムーア(Demi Moore)は,当時ハリウッド史上最高額とされた1,250万ドルのギャラで注目を集め,トレーニングによって体重を約55kgまで絞ったと喧伝された.しかし,肉体的努力が演技の説得力に結実しているかと言えば疑問が残る.結果として,ゴールデン・ラズベリー賞で最低女優・最低監督・最低脚本を総なめにしたのは,悪意でもなく,作品の完成度を正確に反映した評価であるように思う.
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原題: STRIPTEASE
監督: アンドリュー・バーグマン
115分/アメリカ/1996年
© 1996 Castle Rock Entertainment
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