■「チーム★アメリカ ワールドポリス」トレイ・パーカー

チーム★アメリカ/ワールド・ポリス [Blu-ray]

 アラブのテロリストが大規模なテロを計画!その情報をつかんだ「チーム★アメリカ」の司令官スポッツウッドは,ブロードウェイ俳優のゲイリーをリクルートしておとり捜査に派遣する.ゲイリーたちの活躍で大量破壊兵器の回収に成功したものの,パナマ運河で新たな爆弾テロが勃発.実はテロリストの真の黒幕は,アジア某国の独裁者だったのだ….

 治的意図はない,と製作者トレイ・パーカー(Randolph Severn "Trey" Parker III)とマット・ストーン(Matt Stone)がわざわざ公言した時点で,すでに信用ならない.「サウスパーク」シリーズでTV諷刺の限界を押し広げた彼らに対し,本作公開前には,さすがに毒が抜けたのではないかという半ば冗談めいた危惧すらあった.しかし,開始数分で完全に裏切られる.世界の警察を自称する「チーム★アメリカ」が,マシンガンと大量破壊兵器を携えてテロリストを殲滅する.その過程で,パリの街並みは瓦礫と化し,エッフェル塔もピラミッドもスフィンクスも無惨に破壊され,民間人の犠牲は一切顧みられない.精巧すぎて不気味なほど人間味を帯びたマリオネットたちが,「正義」の名の下に世界を破壊していく.

 破壊は,任務遂行の副産物として描かれる.ハリウッド的アクション映画が長年免罪してきた論理を,あまりにも露骨に可視化することで,その空虚さを笑いへと転化している.敵役として名指される,金正日が大量破壊兵器を売りさばこうとしているという設定は,当時のアメリカの対外政策,とりわけ「悪の枢軸」言説を想起させる.本作での金の人形造形は,公式写真やプロパガンダ映像を徹底的に参照して作られており,過剰な誇張でありながら失笑を買うほどの説得力を持つ.笑えるほど正確なデフォルメこそが,パーカー&ストーンの諷刺の手法である.ハリウッドのリベラル派著名人たち――アレック・ボールドウィン,スーザン・サランドン,ショーン・ペン,マーティン・シーン,ヘレン・ハント,マット・デイモン――が,ほとんど実名同然の人形として登場し,爆破され,首を刎ねられ,無残な最期を遂げる.

 愛国主義を批判するリベラルな言説が,安全な場所からの正義として嗤われている.チーム★アメリカにスカウトされた俳優ゲイリーが,アーリントン国立墓地で愛国心に目覚める場面は,感動的な音楽と陳腐な言葉が,ナショナリズムの感情操作をむしろ剥き出しにする.「政治的メッセージはない」という製作者の言葉を真に受けるなら,本作は下品な人形劇にすぎない.しかし実際には,不謹慎という言葉を軽々と超えた描写の連打によって,右も左も等しく殴りつける姿勢が明確である.本作は特定の思想を擁護するプロパガンダとはいえず,ブラックユーモアを,免罪的なカタルシスとして受け取るか,無責任な暴力として拒絶するかのどちらかを観客に迫る.

 すべてを人形アニメーションで撮影するために,当初の予定よりも制作期間が大幅に延び,有名な過激性描写のシーンは,全米公開時にレーティングを下げるため何度も編集を施された.その労力自体,くだらなさを本気で作り込むという製作陣の美学を物語っている.また,ジェリー・ブラッカイマー的な「ドッカン・派手派手・中身スカスカ」なアクション映画を,文字通り単細胞の人形たちに演じさせることで,その様式を完璧に模倣し,同時に解体してみせた点も見逃せない.バカがバカをやる.そのバカさを最大化するために,巨額の予算と高度な技術を投入する.この倒錯した誠実さこそ,こうした作品の存在を許容し,笑う自由を保持できる社会は,少なくとも表現の自由という点においては健全である.

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原題: TEAM AMERICA - WORLD POLICE

監督: トレイ・パーカー

98分/アメリカ/2004年

© 2004 Paramount HE.