▼『怪優伝』佐野眞一

怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること

 三國連太郎.八八歳.俳優生活六〇年.出演作の役柄以上に,波瀾に富む人生を歩んできた稀代の俳優の正体は何か?戦後映画界を疾走した「生きたフィルモグラフィー」に佐野眞一が挑む――.

 優歴60年の三國連太郎を前に,三國の自宅で代表作10本を鑑賞しながら行われた贅沢かつ至福のインタビュー.誰にとっての幸いか.紛れもなく,戦後映画界に光芒を放つ星の一つである「怪優」に心酔するインタビュアーにとってである.泥沼から異物を引き摺りだすような著者の野次馬根性は,本書では青春時代からの憧憬の役者でもあった三國への称賛に譲っている.

 三國の出自・女性遍歴・偽装結婚・経歴詐称・出征を嫌った逃亡生活などは,これまでにも巷間伝わってきた.それらを歴代作品の製作背景を振り返りながら,自ら吐き出す言葉の中に,役者論や人生観が垣間見える.ただし,質問で本質的な「核」に触れられそうになると,三國は巧みに距離をとる.いわば作品に応じ,製作側の要請にも報いる役の上で威圧,恐怖,和み,惰弱,仁慈と多端の存在感を示してきた狡知.2011年に米寿を迎えた鵺の底知れなさに,著者はしばしば舌を巻き欣然とする.

 今後の展望もなく,気概も黙して語らない一貫した姿勢に,稀有の役者であり続ける気質があった.本書で選定された10作品は以下.「飢餓海峡」(1965)「にっぽん泥棒物語」(1965)「本日休診」(1952)「ビルマの竪琴」(1956)「異母兄弟」(1957)「夜の鼓」(1958)「襤褸の旗」(1974)「復讐するは我にあり」(1979)「利休」(1989)「息子」(1991).

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原題: 怪優伝―三國連太郎・死ぬまで演じつづけること

著者: 佐野眞一

ISBN: 9784062168137

© 2011 講談社