| ヤクザ,ホスト王,ストリッパー,ホームレス……歌舞伎町を象徴する人々18人の本音を通し,これまで誰も描き得なかった不夜城の相貌が浮き彫りに!歌舞伎町の生の声が迸る驚愕のノンフィクション――. |
アジア最大の歓楽街として語られてきた歌舞伎町だが,その実像は通俗的イメージをはるかに超える複雑さを持つ.自己規律と相互監視,奇妙な連帯によってかろうじて均衡を保つ都市空間である.著者は中国湖南省出身で,日本語・北京語・広東語・湖南語を操る.「歌舞伎町案内人」としての活動は,異文化と危険地帯を仲介する翻訳者の役割に近い.言語のみならず価値観,掟,沈黙の意味まで翻訳できる者だけが,この街を描き得る.
統計的に言えば,歌舞伎町は新宿区全体のわずか2%の面積に過ぎない.しかし3000軒を超える飲食店,バー,クラブ,ラブホテルが集中している.かつて凶悪事件の発生率が東京都平均の約196倍と喧伝されたが,2000年代後半以降,警察による集中的な取締りと監視の強化により,その数字は実態の指標としての有効性を失いつつある.今や街路やビル内の防犯カメラは50台どころではなく,民間分も含めれば桁違いの監視空間と化している.歌舞伎町は無秩序の象徴から,過剰に管理された歓楽街へと変貌したのである.
転機は東急歌舞伎町タワーの開業だった.クリーンで観光的な歌舞伎町という新イメージを発信している.だが排除の対象は今も存続する.路上飲み,客引き,"トー横"と呼ばれる若者の滞留――こうした事象は,再開発の波の中でも消えない.本書が描いた歌舞伎町は再開発以前の姿だが,むしろ現在を照らす補助線として,いっそう深い意味を帯びる.著者が一年をかけてインタビューした18人の住人は,一般的な道徳や法秩序の外縁に位置しながら,独自の倫理と誇りを持つ.
成功と没落,忠誠と裏切りが通常社会よりもはるかに高速で循環する点で,歌舞伎町は現代社会の「実験場」として機能してきたのだ.歌舞伎町は確実に変わった.しかし変わったがゆえに,本書が記録した「住人たち」の声はいっそう貴重である.ネオンの下で欲望が組織され,管理され,時に排除されるこの街は,今なお日本社会の濃縮された影である.本書は,その影を覗き込むための信頼できる内部証言の一つなのだ.
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原題: 歌舞伎町の住人たち
著者: 李小牧
ISBN: 4309017282
© 2005 河出書房新社


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