Books(人文)

▼『阿片』ジャン・コクトー

詩人であり劇作家,またある時は映画監督.本書は,虚と真実を自由に横断したマルチ・タレント,ジャン・コクトーが,愛弟子ラディゲの死による孤独のため陥った阿片中毒の解毒治療中に綴ったデッサンとノートによる――. 阿片を制するものは支那を制す,とさ…

▼『大いなる遺産』チャールズ・ディケンズ

貧しい鍛冶屋のジョーに養われて育った少年ピップは,クリスマス・イヴの晩,寂しい墓地で脱獄囚の男と出会う.脅されて足枷を切るヤスリと食物を家から盗んで与えるピップ.その恐ろしい記憶は彼の脳裏からいつまでも消えなかった.ある日彼は,謎の人物か…

▼『「塩」の世界史』マーク・カーランスキー

塩は,人間の生存と生活に,欠くべからざる物質である.そして,人間の歴史は,塩をめぐって大きく展開してきた.科学技術,土木工学,税制や社会体制,そして宗教や料理といった文化も,塩によって発達した.ときには,部族間・国家間の対立や戦争も引き起…

▼『ソフィーの選択』ウィリアム・スタイロン

1947年の夏,作家になる夢を抱いている純粋な若者スティンゴは,出版社勤めを辞めて創作のために新しい生活を始めようとしていた.安下宿に移った彼は,階上に住むポーランド美女のソフィーやユダヤ人のネイサンと親しくつきあうようになる.ソフィーとネイ…

▼『李香蘭 私の半生』山口淑子,藤原作弥

戦前から戦中にかけて女優,歌手として活躍し,「白蘭の歌」「支那の夜」「夜来香」など数々のヒットを飛ばした李香蘭.生粋の日本人であるのにもかかわらず,日中両国の暗い時代の狭間に立たされ,中国人としてデビューした彼女は,いかにして自らの運命を…

▼『好色五人女』井原西鶴

「不義はお家の御法度」だった江戸時代.それは人妻だけでなく娘が自由に恋することもできない厳しい封建制度の中で,掟にそむいて「愛」を貫き通した,お七,お夏,おさんの生きざまを描く人間賛歌――. 井原西鶴が41歳で発表した浮世草子の処女作『好色一代…

▼『死刑執行人サンソン』安達正勝

敬虔なカトリック教徒であり,国王を崇敬し,王妃を敬愛していたシャルル‐アンリ・サンソン.彼は,代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった.そして,サンソンが歴史に名を残すことになったのは,他ならぬその国王と王妃を処…

▼『弓と竪琴』オクタビオ・パス

「ポエジーは認識,救済,力,放棄である.世界を変えうる作用としての詩的行為は,本質的に革命的なものであり,また,精神的運動なるがゆえに内的解放の一方法でもある.ポエジーはこの世界を啓示し,さらにもうひとつの世界を創造する.」メキシコのノー…

▼『アナバシス』クセノポン

前401年,ペルシアのキュロス王子は兄の王位を奪うべく長駆内陸に進攻するが,バビロンを目前にして戦死,敵中にとり残されたギリシア人傭兵1万数千の6000キロに及ぶ脱出行が始まる.従軍した著者クセノポンの見事な采配により,雪深いアルメニア山中の難行…

▼『役人の生理学』オノレ・ド・バルザック

本書が書かれた19世紀中頃は,フランスの官僚機構が揺るぎないものとして確立をみたときであった.《君主》の代わりに《万人》に仕えるという目的は,いつしか巨大な無責任体制となり,さまざまな非能率を生み出していく.時代の幻視者バルザックはこの近代…

▼『森の生活』ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

ソロー(一八一七―六二)は,ウォールデン湖畔の森の中に自らの手で小屋を建て,自給自足の生活を始めた.湖水と森の四季の佇まい,動植物の生態,読書と思索‥‥自然と共に生きた著者の生活記録であると同時に「どう生きるべきか」という根本問題を探求した最…

▼『残像に口紅を』筒井康隆

「あ」が使えなくなると,「愛」も「あなた」も消えてしまった.世界からひとつ,またひとつと,ことばが消えてゆく.愛するものを失うことは,とても哀しい‥‥言語が消滅するなかで,執筆し,飲食し,講演し,交情する小説家を描き,その後の著者自身の断筆…

▼『楼蘭』井上靖

大国の漢と匈奴とにはさまれた弱小国楼蘭は,匈奴の劫掠から逃れるために住み慣れたロブ湖畔の城邑から新しい都城に移り,漢の庇護下に入った.新しい国家は鄯善と呼ばれたが,人々は自分たちの故地を忘れたことはなかった.それから数百年を経て,若い武将…

▼『ライシャワーの日本史』エドウィン・O.ライシャワー

今日の日本はいかにして形成されたか.日本の気候風土と日本人の創意工夫の気質は,繊細な美意識と逆境から立ち直る精神を培う一方,背後から政治が操られる独自の支配形態を生み出した.日本生まれの著者が,東西世界を見渡す高い視点から,日本史の主流と…

▼『王になろうとした男』ジョン・ヒューストン

『マルタの鷹』『白鯨』『アフリカの女王』など,不朽の名作の製作秘話に加え,赤狩りに抵抗した不屈の反逆精神,ヘミングウェイ,サルトルなど芸術家たちとの友情,五度も結婚した波瀾に満ちた生涯を率直に語ったハリウッド・メモワールの最高傑作――. 原著…

▼『視覚的人間』ベラ・バラージュ

一九世紀末に発明された映画カメラは瞬く間に無声映画を創り出した.本書はその無声映画が絶頂への登路にさしかかった時に,クローズアップ,モンタージュを中心にして理論的・体系的に整備した古典的名著.映画という新しい芸術の果すであろう社会的・文化…

▼『寛容についての手紙』ジョン・ロック

迫害,拷問,殺戮が,宗教の名によって横行した17世紀ヨーロッパ.信仰を異にする人びとへの「寛容」はなぜ護られるべきなのか?本書は,この難問に対するロックの到達点.政治と宗教の役割を峻別し,人々の現世の利益を守るのは為政者の任務だが,魂の救済…

▼『コレラの時代の愛』ガブリエル・ガルシア=マルケス

夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳.彼女への思いを胸に,独身を守ってきたという男は76歳.ついにその夜,男は女に愛を告げた.困惑と不安,記憶と期待がさまざまに交錯する二人を乗せた蒸気船が,コロンビアの大河をただよい始めた時‥‥内戦が疫病…

▼『一神教の誕生』オドン・ヴァレ

宗教の長い歴史のなかでも,一神教の誕生は特筆すべき「大事件」であった.なぜ一神教が誕生し,しかも世界中に広まったのか.本書では,ユダヤ教から,キリスト教,イスラム教へとつづく一神教の歴史をとりあげ,それぞれの誕生の背景や変遷をたどり,一神…

▼『聖なる魂』デニス・バンクス,森田ゆり

現代アメリカに生きるインディアンがアルコール中毒の犯罪者として,亡命・地下潜伏・逮捕そして投獄という嵐をくぐり抜け,北米大陸の先住民意識に目覚める.その権利回復・差別撤廃に立ち上がった彼は,インディアン運動の指導者として自立する.激動の半…

▼『今昔物語』福永武彦〔訳〕

平安時代末期に成ったこの説話集は,おそらく大寺の無名の書記僧が,こんなおもしろい話がある,ほかの人に知らせてあげたい,おもしろいでしょうといった気持ちで集め書かれたと言われている.本書は,大部の説話集の中から本朝の部のみをとり上げ,さらに…

▼『人間の覚悟』五木寛之

そろそろ覚悟をきめなければならない.「覚悟」とはあきらめることであり,「明らかに究める」こと.希望でも,絶望でもなく,事実を真正面から受けとめることである.これから数十年は続くであろう下山の時代のなかで,国家にも,人の絆にも頼ることなく,…

▼『青春漂流』立花隆

一度は挫折し方向転換した若者たち.その大胆な選択が成功だったかどうかを語ることはまだ出来ない.何しろ彼らは,迷いや惑いの青春の真っただ中にいるのだから.自らも不安や悩みの放浪の旅から自己確立をしたという著者は,職業も種々な11人の若者たちと…

▼『朱の丸御用船』吉村昭

江戸末期,難破した幕府の御用船からこっそり米を奪った漁師たち.村ぐるみの犯罪は完全に隠蔽され,平和な生活は続くかに見えたが,ある日一通の書簡が村に届く.難破船に隠されていた意外な事実が明らかになる時,想像を絶する災厄が村に襲いかかる.追い…

▼『八月の博物館』瀬名秀明

あの夏,扉の向こうには無限の「物語」が広がっていた.20年前の夏の午後,ふと足を踏み入れた洋館で出会った不思議な少女・美宇.黒猫,博識の英国人紳士.その奇妙な洋館の扉からトオルは時空を超えて,「物語」の謎をひも解く壮大な冒険へと走り出した――…

▼『エリゼ宮の食卓』西川恵

メニューは雄弁である.仏大統領官邸エリゼ宮の饗宴で供されたワインと料理の中に,ホストである仏大統領のメッセージが隠されているのだから.英女王・米大統領・日本の首相から天皇まで,晩餐会に招待された各国要人は,ワインの銘柄と献立でどう格付けさ…

▼『青春の蹉跌』石川達三

生きることは闘いだ.他人はみな敵だ.平和なんてありはしない.人を押しのけ,奪い,人生の勝利者となるのだ.貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し,挫折した法律学生江藤賢一郎.成績抜群でありながら専攻以外は無知に等しく,人格的道徳的に…

▼『カントの人間学』中島義道

エゴイズム,親切,友情,虚栄心‥‥人間の「姿」はいかなるものか.複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り,人間の有り様の不思議を考える――. 崇高と野卑,熱中と冷淡,聡明と愚鈍,明朗と陰鬱,博愛と冷酷――人間の複雑性を認めていたイマヌ…

▼『バナールな現象』奥泉光

34歳・予備校教師のありふれた日常の光景に,底なしの混迷の闇が,突如巨大な口を拡げる‥‥影のごとき「友人」の出現,「政治家秘書」の陰謀めいた挙動.アフリカの砂漠のイメージを呼び込み,虚構と現実のめくるめく合体を果敢に展開する長編問題作――. 大江…

▼『知られざる傑作』オノレ・ド・バルザック

「芸術の使命は自然を模写することではなくこれを表現することにある」という信念をいだいて一つの作品に十年の精進をささげた老画家が,限りなき理想と限りある人間の力量との隔絶に絶望し,ついに心血を注いだ画布を焼きすてて自殺する経緯を描いた「知ら…