■「BROTHER」北野武

BROTHER [Blu-ray]

 山本はヤクザの幹部.対立する組との抗争に敗れ,親分は殺され,信頼していた兄弟分とも別れてしまう.たったひとりになって思い出すのは,留学したまま消息が絶えてしまった弟ケンのこと.こうして山本は弟を追ってL.A.へ――そんなある日,すれ違いざま,因縁を吹っかけてきた黒人青年デニーの目を山本は負傷させてしまう….

 き刺さるような痛みと,圧倒的な暴力の後に訪れる静謐な場面.日本の暴力組織“ヤクザ”がL.A.に持ち込んだ「ハラキリ」に「指詰め」は,現地ギャングも仰天する流儀.必要とあらば,義兄のために命をも擲つ日本の舎弟と,親愛の情よりカネの威力がモノいうL.A.のならず者の対比は,絆のとらえ方が質的に異なることの強調である.お国柄ということだろうか.

 母国を追われた山本(ビートたけし)は,北野武が好んで描いた「死に場所を探し求める男」,その類型.無口ながら義侠心で慕われる孤高のカリスマ,今では見られなくとなったキタノ・ブルーの基調,既定化されたアンニュイな悲劇的結末は,往年の熱狂的ファン“キタニスト”を愉しませる.

 北野映画の「暴力」としては,紋切り型のパターンに終始するが,シリアスな場面に挟まれるブラックユーモアの魅力は独特.銃を乱射し,片方の口角を歪めて放たれる有名な決め台詞「ファッキンジャップぐらい解るよ馬鹿野郎」.シニカルな笑いが装置となって映画に埋め込まれている.こんなチープさにより感銘が得られる安心感に,こちらも苦笑が漏れる.

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原題: BROTHER

監督: 北野武

114分/日本=イギリス/2000年

© 2000 オフィス北野=レコーデッド・ピクチャー・カンパニー