ボストンの小さな街で幼女誘拐事件が発生し,捜査の手伝いを依頼された地元出身の若い私立探偵パトリックとアンジーは,事件の背後に広がる現代アメリカ社会の深い闇に直面しながら,想像をはるかに超えた真実に迫っていく…. |
原作者のデニス・ルヘイン(Dennis Lehane)は,かつてカウンセラーとして児童虐待のケースを幾度か扱ったことがあるという.児童期の壮絶なトラウマを扱った『ミスティック・リバー』でも,この問題が人生の災いと破綻を呼ぶことをプロットとしていた.そんな原作を,大根役者のイメージしかなかったベン・アフレック(Ben Affleck)が,弟のケイシー・アフレック(Casey Affleck)を主演に据えて撮った.
児童虐待,幼児誘拐,ペドフィリア(小児性愛).陰鬱なテーマを匂わせる幕開けの映画だが,それがリアリティに欠けていないことがこちらを憂鬱にさせる.自身もボストン出身というベンは,ホワイト・トラッシュの典型が集う街の姿と,被害者の母親を矛盾なく一致させる.「あの人は性根まで腐っているのよ」と言い捨てたアンジェラの言葉よりも,子どもは親の下に返すべき,と「正義」を信じた年若き探偵は,自分の熱血的行動に悔いはないかという葛藤が生まれる.そこで映画は終わり,現実が始まるのである.
兄のベンよりも,弟のケイシーの方に役者としてのセンスを感じる.一本気で未熟な役柄に相性が良かったのだろうが,違和感がない.原作の探偵はもっと無骨なタイプとされているが,映画の設定も線の細さと若さに味がある.実に荒削りで青臭い感じのするフィルムだが,ボストンに対する深い愛着とこだわりが伝わってくる.
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原題: GONE BABY GONE
監督: ベン・アフレック
114分/アメリカ/2007年
© 2007 LivePlanet,Miramax Films,Ladd Company