■「裸の大将放浪記」山田典吾

裸の大将放浪記 山下清物語 [DVD]

 芦屋雁之助が放浪の天才画家として今なお多くの人々に愛される山下清を熱演.山下清の障害を持ちながら自然体で生き,戦争の混乱期へて日本のゴッホとよばれた晩年までを感動とユーモアで描く….

 作は,1981年の国際障害者年記念作品として製作されている.1971年「精神薄弱者の権利宣言」,1975年「障害者の権利宣言」の採択を踏まえ,国際障害者年のスローガンは<完全参加と平等>だった.当時の精神発達遅滞というハンデを背負い,級友からはコケにされたため,何度か刃物を振り回して「ヤバイ奴」と敬遠された山下清.養護施設八幡学園で点描風の貼絵を学び,その芸術性の高さが評判を呼ぶ.

 「放浪の画家」「日本のゴッホ」と誉めそやされるも,窮屈な人間関係を嫌い,放浪癖を抑えることができなかった.牧歌的で人情のふれあいを描いたTVドラマ版と比較し,本作の評判は芳しくない.行く先々で食糧を調達する口実に,健在であった母が「死んだ」ことにして,その遺言で嘘八百で同情を買ったことが不評だった.実際は人をかつぐことなど可愛いほうで,窃盗,恐喝――年少者へのカツアゲだったらしい――の類も行っていたという.

ぼ,ぼくは頭が悪くて,体も弱くて,お父さんもお母さんも早くに死んじまって.母さんは死ぬ時に,き,清は,か,か,母さんが死んだ後は,お前はお腹が空いたら親切な人におむすびをもらって食べなさいといって死にました.おわり

 だからといって,リアリティを追求した映画でもないことが残念.いつの間にか開花したように見える才能,斯界の賞賛とは裏腹に,放浪から連れ戻されて無気力な姿を見せ,やがて脳出血で倒れ死去する.脚本が粗すぎて2時間近くが冗長に思えてしまうのだ.ヒューマニティを強調するならば,純真無垢な山下清に,善意の塊のような理解者を誇張的に登場させ,狂言回しの演者も設定することが無難だった.

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原題: 裸の大将放浪記

監督: 山田典吾

117分/日本/1981年

© 1981 現代ぷろだくしょん