■「世界を変えたテレビゲーム戦争」ダニエル・ユンゲ

世界を変えたテレビゲーム戦争

 数十億ドル産業に発展したテレビゲーム業界の黄金時代に生き残りをかけて闘ったライバルたちの物語.世界初のビデオゲーム機の誕生やアタリ社の登場,90年代の任天堂セガソニーの壮絶な競争期など,知られざる歴史の裏側を,ノーラン・ブッシュネルほかの開発者ら自らが語る….

 十億ドル規模のビデオゲーム業界の創成期における,個人的な戦いの知られざる物語を描いたドキュメンタリー.壮大なイノベーションと壮絶な失敗,エゴにまみれた巨大なライバル関係の物語であり,企業内クーデターや産業スパイ,たった一つのカートリッジで得られるという莫大な富の約束など,50年にわたる多世代の叙事詩である.アタリ社の共同設立者ノーラン・ブッシュネル(Nolan Bushnell)をはじめ,ゲーム業界のエキスパートたちが登場し,プログラマー,エンジニア,経営者,そしてビジネス手法を駆使して互いに競い合い,今日のゲーム業界の重要人物たちとしての地位を築いていく様子を描く.

 ビデオゲーム産業の成り立ちから,アーケードから家庭用ゲームへの移行,そしてモバイルゲームの台頭まで,多彩な哲学におけるゲームの役割の重要性を考察する.このドキュメンタリーは,ビデオゲームの歴史と文化についての知識が世界中で広まっていない初学者向けの番組ともいえ,スペースウォーからスタートし,プレイステーションの到来までの軌跡を追い,開発者たちが提供する資料的価値あるインサイトを通じて,ゲーム産業の興隆と変革を明らかにしている.「操作は簡単,攻略は困難」というブッシュネルの言葉が,ゲームの本質を如実に表しており,彼の失敗からの学びやフィードバックの重要性が強調される.

 優れたゲームのバランスが楽しさの源であり,アイデアの力がグラフィックよりも優越するということである.また,ゲーム開発の過程でプレイヤーの動向を理解し,楽しさを最優先に考える姿勢の大切さを忘れてはならない.しかしながら,企業の巨大化が進む中で外部の視点が介入することは避けられない.映画産業のアーティストたちがメジャーレーベルに対抗し,スティーブ・ジョブズSteve Jobs)がアップルから排除される経緯など,背後の理念と価値を理解せずに発言権を持つ危険性にも触れている.企業の巨大化がゲーム開発に影響を及ぼし,市場の変動や競争が激化する中で,プレイヤーの楽しさを最優先に考える姿勢の大切さが再確認されるだろう.

 「アイデアなんてささいなものだ.シャワーを浴びたら誰でも思いつく.大事なのは実行する人間」という言葉が,テクノロジーを活用した楽しみの創造の過程の重要性を示している.アーケードの誕生からアタリの台頭,そして任天堂セガとの競争によって形成されたゲーム産業の変遷が描かれ,その過程でのリーダーシップと創造力が強調される.結局,この物語は,個人の情熱とイノベーションがどれほど大きな産業を築き上げる力を持っているかを語るものであり,ビデオゲームが単なる娯楽を超えて,クリエイティビティと文化を形成する力を持つアートフォームであることを訴えかけているのだ.

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原題: GAME CHANGERS - INSIDE THE VIDEO GAME WARS

監督: ダニエル・ユンゲ

85分/アメリカ/2019年

© 2019 Efran Films