■「インディアン・ランナー」ショーン・ペン

インディアン・ランナー [DVD]

 真面目な兄ジョーはハイウェイをパトロールする警官.ある日彼の温和な性格とは反対の粗暴な弟フランクがベトナムから帰ってきた.ジョーはフランクをなんとか正業に就かせようとするが,彼の理由なき犯罪行為を止めさせることは出来ず,遂には殺人を犯してしまった弟を兄自らが追うこととなる….

 親であってもクズと呼ぶほかない人間が存在することが,悲しい事実としてある.信頼を寄せ合えるきょうだいがいる人は幸せである.一人っ子も悪くない.最悪は,許しがたい怒りの念を沸き起こさせる家族である.更生不能なそれが自分と同じ父母から生まれ出たという事実が,さらに人を苛立たせる.森に生息する狼も熊も,先住民族の使者"インディアン・ランナー"を捕食しない.使者は時間を超え,不死のメッセージを現代に伝える.

 この話を2人の息子にする父親は,不可侵の神秘を彼らに伝えようとした.ジョーは性根の腐敗したフランクを,どうしても心底から憎むことができない.幼い頃の無邪気な記憶が邪魔をする.最終的に,警官の良心と義務感をもってしても,弟を捕縛することはできないのである.ブルース・スプリングスティーンBruce Springsteen)の曲《ハイウェイ・パトロールマン》にインスパイアされ生まれたという本作は,ハイスクール時代から8ミリを回していたほどの"映画狂"ショーン・ペン(Sean Justin Penn)の衝動のメッセージを伝える.

25マイル北にスー族がいた.南西10マイルにもだ.ここが森だった頃,インディアンの使者がここを駆けていた.親父が言ったのさ.“時間と空間を超え,使者はメッセージとなる”.狼も熊もメッセージは食えないのさ.――俺は使者だ.メッセージだ.メッセージは,捕まらない

 フランクは,スプリングスティーンの歌詞にあるように「あいつと俺は兄弟なのだから」の情誼を捨て切れなかった.濃すぎるキャラたちが,鑑賞後の疲労感を増幅させてくれる.壮絶に死ぬためだけに登場してくるデニス・ホッパー(Dennis Hopper),愚鈍で哀れなパトリシア・アークエット(Patricia Arquette),一瞬だけの登場で異様なインパクトを残すベニチオ・デル・トロ(Benicio Monserrat Rafael Del Toro Sanchez).

 インディアン・ランナーは,いつの時代にも生き続ける――善きものとしても,悪しきものとしても.まともな家族に囲まれている人と,そうでない人.実生活でのそんな区別が,映画の印象を大きく左右することだろう.エンドクレジットの前の言葉は,ラビンドラナート・タゴール(Rabindranath Tagore)「新しく生まれる子供たちは皆,神はまだ人間に対して落胆していないというメッセージをもたらす」.

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原題: THE INDIAN RUNNER

監督: ショーン・ペン

126分/アメリカ/1991年

© 1991 WESTMOUNT COMMUNICATIONS FILM JOINT VENTURE, L.P.