■「ブラック・サンデー」ジョン・フランケンハイマー

ブラック・サンデー [DVD]

 ベトナム戦争で捕虜にされ,帰国後に祖国に裏切られ,妻にも裏切られた男.彼は,アメリカ合衆国大統領も来場する予定のスーパーボウル会場を8万人の大観衆もろとも爆破する計画を立てる.彼はアラブ系過激派組織「黒い九月」と協力し,爆弾を飛行船に仕掛ける.一方,イスラエルの特殊部隊員,カバコフ少佐は,アメリカ国内で計画されている大規模テロについての情報をつかむ….

 頭のテロリスト会合場面に日本人が堂々と加わっている姿に驚く.海外の過激派を描いた映画において,日本人が加担する場面は珍しい.特に,1972年のミュンヘン五輪で選手村を襲撃したゲリラ組織「黒い九月」が,実名で登場していることもさることながら,この映画は日本の過激派が自国以外,中近東にまで破壊活動を拡大させていった事実を,はっきりと意識している.一方,アメリカ国内では当時,顕著なテロ活動は報告されていなかった.

 この映画は,世界がグローバルに広がる中で,企業やNGOだけでなく,テロ組織も同様に拡大し,焦点を絞ったターゲットを選び始める様子を予見していたのだ.本作は,現代でもなお見応え十分のスペクタクルと臨場感を持っている.徐々に進行し,しなやかに旋回する飛行船は,見る者にハリボテであることを気づかせずに迫ってくる.22万本ものダーツを一度に発射する新型爆弾が8万人の群集の上空で炸裂したら,それは一体どれほどの被害をもたらすだろうか.

 恐怖は,砂漠での「実験」シーンで最も鮮烈に描かれている.それは,見る者の想像力と恐怖心を同時に刺激する鮮やかな効果を生んでいる.映画の中で,爆弾が日本の貨物船で輸送される場面は,当時の日本当局に苛立ちを抱かせたことだろう.赤軍派連合赤軍の騒動が生々しく記憶に残っている限り,大規模テロ行為を描いた映画は,一層避けたくなるものだ.このような背景から,映画の公開には多くの思惑と不安が渦巻いていたことは理解できる.

 実在の「黒い九月」関係者から「この映画を上映した映画館を爆破する」という脅迫がなされ,国内映画館の上映は急遽中止となった.しかし,本作はテロリストの背景を過不足なく描きつつ,相容れぬ価値観と文明の衝突を巧みにプロットに取り入れている.ジョン・フランケンハイマー(John Frankenheimer)の気概あるアプローチは称賛に値する.テロ活動による国家転覆を真剣に描いた映画の先駆けであり,刺激的なアクションとサスペンスの中で,テロ行為の本質について深く探求している傑作.

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原題: BLACK SUNDAY

監督: ジョン・フランケンハイマー

143分/アメリカ/1977年

© 1977 Paramount Pictures