■「ピラミッド 5000年の嘘」パトリス・プーヤール

ピラミッド 5000年の嘘 [Blu-ray]

 クフ王の墳墓として知られるギザの大ピラミッド.いまだ謎の多いピラミッドの常識を覆す驚きの真実が明らかになる.第二次世界大戦前に英国空軍が偶然撮影した写真により,ギザの大ピラミッドが4面体(四角錐)ではなく,実は8面体だという事実が目視できる.そしてそれが,地理学,天文学的観点からも,緻密な計算の上,設計されていたことがわかる.多方面から冷徹な科学の視点で検証が行われ,各々の分野の第一級の専門家の数々の驚くべき証言が,これまでの常識の無理,不合理を追及し,突き崩し,まったく新たなピラミッド像を浮かび上がらせる….

 ザの大“金字塔”を,文字通り神秘のビジョンに包もうとする試みは,文明の測定という名の壮大なロマンになる.オーバーテクノロジーの熱烈な崇拝者たちは,さぞかし本作の主張に溜飲を下げたことだろう.分類的には「トンデモ」な珍説の羅列なのだが,そのもっともらしい示唆には感心する.ピラミッドの高さと底辺には,自然界に普遍的に存在する黄金比(1:1.618の比率)が隠されている.

 高さ146mもあるピラミッドの頂点は,底面の正中心との誤差がわずか0.3m.200万個の巨石を僅か20年で「完璧」に積み上げ,それは4500年前の原始的な「鎚」と「鑿」だけで成し遂げられたというのである.既存の学説の不合理・説明不能性を,怒涛の勢いで強弁する内容は,いちいち指示的で面白い.気になったのは,要所要所で「…これは,私の『ブレーン』によると…」――30年間ピラミッドの在野研究を続けてきたと思われる――不審人物の差し金が出てくる点.何者だ,それは.

 原題通りピラミッドの「意外な事実」という呼び込みなら,まだ謙虚さは残されるが,邦題の「嘘」では明らかに誇大広告.正しくは「一考」「見解」であろう.数々の「謎」のラッシュで押しまくった映画後半,期待される画期的な「新説」「仮説」は提示されない.その肩透かしといったらない.世界よ,これだけ神秘のヴェールに蔽われた“ピラミッド”に対する目を開け!――これが本作の堂々の結論であって,どうにも憎めない.

 真実の解明にはほど遠い論法からは,「私が解らないことはあなたも解らない.だからあなたは,私を論破することはできないはず」という道化的ネタだけが豊富だった.興味を掻きたてるプレゼンである.これは,反証にも建設性を求める一般的学問的態度とは,最も縁遠いサイエンス・コメディ.しかし歴史には許容されるべき裾野がある.学問の外濠としての空想というニッチが.

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原題: THE REVELATION OF THE PYRAMIDS

監督: パトリス・プーヤール

106分/フランス/2009年

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