大手化粧品会社のデザイナー,ペイシェンスは,会社でもプライベートでも自分に自信が持てない女性.ある夜ペイシェンスは,発売直前の新作クリームに隠された秘密を立ち聞きし,何者かに追われるうちに命を落としてしまう.その時,彼女に不思議な異変が起こる.再び目を覚ましたペイシェンスは,驚異的な反射神経と跳躍力を持つ,自信に満ちたキャットウーマンとなっていた!自分を殺した相手と理由を探るうちに,ペイシェンスはヘデア社の恐ろしい陰謀を知る…. |
猫に9つの生命があるというエジプトの伝説.19世紀終わりには,イギリスの探検家がベニ・ハッサンで30万体の猫のミイラを発見している.豊穣と愛情の女神バステトのビジュアルや猫崇拝の信仰を,冒頭でじっくりと見せる.古雅な第一印象を与えてくれるが,映画本体はDCコミックの超人“猫人間”が,大都会で暴れまわるという単純さを固守した.ヒロインの前に立ちはだかる陰謀の主はやはり女性で,衰えつつある「美」を保つためには万難を排することを厭わない.
宿敵に配されたシャロン・ストーン(Sharon Stone)は,手堅くも最適の貫禄.「ビューリンを5年間使った私の肌は,大理石の硬度を持ち痛みも感じない」とは,オカルト以外の何ものでもない.それが,劇中ながらストーンの言葉であるから,妙に説得力を感じる.銀座ジュエリーマキやヴァーナルのCM出演のイメージと,どうしてもリンクする役柄で一興である.うだつの上がらないデザイナーであるヒロインは,ハル・ベリー(Halle Berry).
スーパーマンが日常では凡庸なサラリーマンであるのと同様の設定か.だが,本作のペイシェンスのように,少々垢抜けず自信なさげな美女がいれば,会社の男性陣が冷遇するはずはない.映画としては大失敗と評されたが,スーパーマンやスパイダーマンとも違う路線を見出せなかったのが敗因.カポエラをモデルにした格闘劇,魅力的な敵キャラに不足はないが,シリーズ化するほどのポテンシャルを持っていないのは確かだろう.
美貌に執着する女性のQOLというテーマは,一作で描き切ってしまった観がある.よって,単発で凍結しているワーナー・ブロスの判断は,正しかったかもしれない.本作で,ゴールデンラズベリー賞最低主演女優賞受賞という手の込んだ嫌がらせを受けたベリーだが,臆することなく,飄々と映画人のプライドを表明したことへの好感は高い.低評価のダメ押しのようにラジー賞(4部門)が降ってきた作品だが,世間が酷評するほど,陳腐で無価値な映画ではない.
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原題: CATWOMAN
監督: ピトフ
104分/アメリカ/2004年
© 2004 Warner Bros. Pictures , et al.