■「軽蔑」ジャン=リュック・ゴダール

軽蔑 [Blu-ray]

 女優カミーユ・ジャヴァルと脚本家のポール・ジャヴァルは夫婦である.夜,ふたりのアパルトマンのベッドルームでの会話は無意味,でもそれは夫婦らしいものであった.翌朝,ポールはアメリカから来た映画プロデューサー,ジェレミー・プロコシュと会った….

 本家のポール/ミシェル・ピコリ(Michel Piccoli)とアメリカ人プロデューサー,プロコシュ/ジャック・パランス(Jack Palance)は,映画「オデュッセイア」の製作をめぐって意見を対立させる.エーゲ海に面した撮影地で脚本を練り直す契約を結び,ポールはカプリ島の撮影現場に向かうが,妻で女優のカミーユブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)も同行する.

 「オデュッセイア」をスペクタクル満載のハリウッド風に仕立て上げようとするプロコシュと,ギリシア叙事詩の重厚な風格を基調としたいポールのコンセプトは,融け合うことはない.協同があるとすれば,妥協は避けられない.その2人の間で浮遊するカミーユの不機嫌で高慢な美しさは,どう見てもプロコシュと相性が良い.下品な大衆性に冒される斜陽の映画界について,夫婦関係の破綻になぞらえジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)は警句としたのであろう.

 カミーユとプロコシュの末路は唐突だが違和感はない.エーゲ海の紺碧,眩い光に満ちたカプリ島ジョルジュ・ドルリュー(Georges Delerue)の静穏な主題歌の反復.優れた色彩感覚に重ねられる音楽も効果的.原色をアクセントやインパクトとして駆使するゴダールの色彩感覚については,フランソワ・トリュフォー(François Roland Truffaut)が「アンリ・マティス(Henri Matisse)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)などの絵画の影響を受けているはず」と述べている.

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原題: LE MEPRIS

監督: ジャン=リュック・ゴダール

102分/フランス=イタリア=アメリカ/1964年

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