■「プルーフ・オブ・ライフ」テイラー・ハックフォード

プルーフ・オブ・ライフ 特別版 [DVD]

 アメリカ人のダム建設技師ピーター・ボーマンが南米テカラで反政府ゲリラに誘拐された.ロンドンのK&R(誘拐身代金保険企業)に籍を置く人質交渉人テリー・ソーンが早速南米に飛ぶ.怯えるピーターの妻アリスは,彼の冷静な行動に落ち着きを取り戻すのだった.そしてテリーは人質交渉を開始.身代金を引き下げるために持久戦に持ち込もうとする.だが,交渉は決裂し,テリーは同じ人質交渉人の仲間たちとピーターを救出すべく強行突入する….

 ニス・クエイド(Dennis William Quaid)が怒り心頭になった証左的な映画,程度の印象しかない凡作.妻メグ・ライアン(Meg Ryan)とラッセル・クロウ(Russell Ira Crowe)の不倫が発覚すると,クエイドはクロウを「俳優としては尊敬するが,人間としてはクズだ」と至極まっとうに非難した.ゴシップ情報を払拭するほど出色の出来の作品になれば,評価もまた違っただろうが,映画としてもおそろしく凡庸であらゆる面で中途半端.「そういえば,主演の2人…」という感想のほうが後を引き,それが作品理解を妨げる.

 若干のフォローをさせてもらうなら,国際的に身代金目的の犯罪は,周知されている以上に数多く発生している.商社駐在員や技術者を狙った誘拐は,プロの交渉人を営利組織が雇って解決を依頼することも多い.犯罪組織とのネゴシエーターを描いた映画は,90年代半ばにややブームになったことがある.本作では誘拐ビジネスと保険の関係をわりと丁寧に説明しているといえなくもない.交渉人テリーと依頼人アリスが惹かれあう過程は,お約束的に展開するのだが,アリスの夫で技師のピーターの人質生活も詳しく登場してくる.だが,その危機感は迫真性に乏しく,薄っぺらいものだ.

 事件発生現場の国家テカラは架空の国だが,モデルはニカラグア,けれど撮影はメキシコ.したがって,犯人グループもみなメキシコ系.下手にサスペンスと恋愛,山場を作るためのアクションと強引に繋ぎ合せた観が強く,ハリウッドB級映画のスタイルは踏襲されている.テリーの特殊コンサルタントとしての「潔さ」を訴えようとする決断も,余韻を残す伏線が張られていないために,何の感慨も呼び起こさない.主演2人の舐め切った職業態度からすれば,人間的にも職業的にも軽薄というしかないだろう.心底どうでもよい愚作である.

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原題: PROOF OF LIFE

監督: テイラー・ハックフォード

135分/アメリカ/2000年

© 2000 Castle Rock Entertainment