35年,アメリカ.カナダ国境近くの州刑務所に服役していたネッドとジムのふたりは,ある日殺人犯ボビーの死刑執行に立ち会った際に,彼の脱獄計画に巻き込まれ,心ならずも刑務所を脱走し,ニューイングランドの小さな町に逃げ込んだ.しかし国境を越えるために身分を神父と偽ったふたりは,折からふたりの神父が来るはずだった教会に送り込まれてしまい,そのまま修道院での生活を始めるのだった…. |
英国聖公会の福音派神学者アリスター・マクグラス(Alister Edgar McGrath)は,16世紀カトリック思想の中で「信仰や実践について,中世後期の教会と結びついたものから,より聖書的なものに立ち返ろうとした人々」を福音主義者と考えるべきと唱えた.その立場は,奇蹟を明瞭で合理的な解釈で立証することを戒め,教会における権威の所在を聖書のみに求める.
困窮の中で人の道から外れた脱獄囚2人組は,行き当たりばったりで良心の呵責もない.ラテン系のこけおどしを得意とするネッドに対し,慎重居士の雰囲気ももつジムはアイルランド系.虚偽と偽装と騙りを駆使する2人だが,福音書15:14「盲人が盲人の道案内をすれば,二人とも穴に落ちてしまう」との末路にならず,痛快な立ち回りで善意の片鱗を「つかむ」.
次に彼らが寄っていくのは信仰そのものであり,その仕方はそれぞれ異なる形になるであろうことを示唆して,大団円を迎える.コメディ映画との鳴り物だが,性根は悪に染まっていないならば,個人的回心の機会は巡ってくるかもしれない,という説教じみたメッセージをどうとらえるか.好き嫌いが大きく分かれる作品だろう.
++++++++++++++++++++++++++++++
原題: WE'RE NO ANGELS
監督: ニール・ジョーダン
107分/アメリカ/1989年
© 1989 Paramount Pictures