■「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」トミー・リー・ジョーンズ

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 スペシャル・エディション [DVD]

 約束は必ず守る!!テキサスに不法滞在するメキシコ人メルキアデス・エストラーダは親友ピートとある約束を交わしていた.それは「俺が死んだら故郷ヒメネスに埋めてくれ」というもの.メルキアデスは,ある日突然,銃弾に倒れる.ピートは犯人が国境警備員マイクであることを突き止め,彼を拉致.メルキアデスとの約束を守るため遺体を掘り起こし,マイクと共にメルキアデスの故郷,ヒメネスを目指す….

 キサス出身の俳優トミー・リー・ジョーンズTommy Lee Jones)が監督を務め,メキシコ出身のギレルモ・アリアガ(Guillermo Arriaga)が十八番の時間軸交叉を駆使して脚本を書いた.「21グラム」(2003)ほどクロスカッティングを徹底させていないが,スパニッシュとイングリッシュが行き交う国境で繰り広げられる男たちの仁義,悲哀,滑稽さ,友愛.奇しくも,死後に3度埋葬される破目になった男を巡る悲喜劇は,人間の抱える孤独感と,リアルな生活感を淡々と描く.

 「メルキアデスの埋葬」といった短いタイトルを採用せず,長い題名にしたのは,3度目の埋葬を主軸にしなければならなかったからだろう.クロスカッティングで,エストラーダの死の顛末が複数の角度から語られる.それ自体は重要なシーンではない.降ってわいたような災難の責任を取るよう強制されたノートンは,チンピラまがいの警備員.ピートの若妻は,死ぬほど退屈な日常から逃げ出したくて仕方なく,中年のウェイトレスとの恋にやぶれたパーキンズには,死体と化した友人のほか何も残らない.

 こういった人物たちの「日常」と,約束の地「ヒメネス」はエストラーダの夢想であり狂言であったことなどが,エピソードの並列・羅列を特徴とするピカレスクとなっている.リー・ジョーンズは,本作を「1つの映画であり,1つの芸術作品」とコメントした.スクリプトが真実なのか,あるいは虚構であるかは問題ではないということだ.すべての人物は,全体的にくたびれて倦んでいる.夢も愛も儚く破れることは,人生には多く訪れる.生きて生活する人間の苦悩の普遍を,死んだエストラーダが引摺るようにして人に実感させている.

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原題: LOS TRES ENTIERROS DE MELQUIADES ESTRADA

監督: トミー・リー・ジョーンズ

122分/アメリカ=フランス/2005年

© 2005 Europa Corp. Javelina Film Company, The