■「ダイ・ハード 4.0」レン・ワイズマン

ダイ・ハード4.0 [Blu-ray]

 独立記念日の前夜.ワシントンDCのFBI本部に設置されたサイバー犯罪部に異変が起こった.あらゆる全米のインフラを監視するシステムに何者かがハッキングを仕掛けてきたのだ.そのころ,ニューヨーク市警統合テロ対策班のジョン・マクレーン警部補は,娘に会うために,管轄外であるニュージャージー州の大学に立ち寄っていた.その時,FBIから無線連絡が入る.これが不運の始まりだった….

 ルース・ウィリス(Bruce Willis)演じるジョン・マクレーン刑事の登場する作品は,第1作から無数の亜流を生み出し,1990年代アクション映画の最高峰を築いた.しかし,作を連ねるごとにクオリティは低下し,第4作も初作には到底及ばない.それでも,ジョン・マクレーンはアクション映画の花形であり続けた.ただし,後続の作品はいずれも僅差であり,タイトルの威光を借りて成功している側面は否めない.

 本作では,マクレーンの魅力が再び輝きを見せる.彼の可笑しさや強靭な肉体,そして運命への挑戦が描かれる一方で,テクノロジーに翻弄される彼の姿も見事に表現されている.マクレーンは徹底的なアナログ志向でありながら,ハイテクな敵との戦いに挑む.第1作のような閉鎖空間での死闘や,裸足での隠密行動,悪役の個性とユーモア,緊張感ある対立はここにはない.

 マクレーンの個性が後続作品でぼやけた問題を避けるために,彼の「融通無碍」と「しぶとさ」に焦点を当てるという無難な選択がなされた.彼が打ち倒す敵は平凡な面子であるが,その敵が操る技術は大惨事を引き起こす.VFXで描かれる迫力満点の災害シーンは,敵の個性を代弁する巧みな演出である.一方で,マクレーンの高所恐怖症の克服や,家族との確執,そしてハッカーを説得する場面など,彼の「普通の男性」としての側面も描かれている.

 彼は家族関係に悩み,包容力を蓄えてきた一方で,平穏な人生を送ることは許されない運命にある.2022年に失語症で俳優を引退,2023年には前頭側頭型認知症を公表したウィリスは,超人マクレーンを演じることはできなくなった.とても寂しいことではあるが,どこかで「マクレーンはどんな敵にも絶対に屈しない」――"ダイ・ハード"――を払拭できない.ニヒルながら愛嬌ある笑顔と勇姿がまた見たい.

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原題: LIVE FREE OR DIE HARD

監督: レン・ワイズマン

129分/アメリカ/2007年

© 2007 TWENTIETH CENTURY FOX