▼『教科書でみる近現代日本の教育』海後宗臣[他]

教科書でみる近現代日本の教育

 江戸時代の往来物,明治の小学読本,修身書,ハナハト読本,サクラ読本,戦後の検定教科書から今日の学習指導要領の告示まで,近現代日本の教育を教科書を中心に概観した画期的な教育史――.

 戸末期の教育書から,「学制」「検定制度」実施の明治期,「国定教科書」「文部省著作教科書」の昭和期以降まで.近代教育史を山脈ととらえるならば,各期に刻み込まれた「ひだ」を本書は概観している.尋常小学一年生用国語読本では,「ハナ ハト マメ マス」を児童に最初に学ばせた.

 昭和生まれで15年度入学生までは,「サイタ サイタ サクラ ガ サイタ」.国民学校の教科書「ヨミカタ 一」では,「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」.日本の初等教育の原型を,豊富な図画で解説している.江戸時代には藩校で漢籍を,寺小屋では往来物を教材としていた.武家と庶民の教育が別系統をなし,ユニバーサルな教育制度の下敷きとなった儒教的観念の看過できない影響力.

 ペスタロッチ主義の開発主義教授法,ヘルバルト主義教授法の普及が“啓蒙”的になされるも,「国定」「検定」の時代には儒教主義的色彩が甦る.戦時中のハナハト世代,戦後のアプレゲール世代を,教科書に対する国家統制が育てたのである.

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原題: 教科書でみる近現代日本の教育

著者: 海後宗臣, 仲新, 寺崎昌男

ISBN: 4487794420

© 1999 東京書籍