▼『計算機と脳』ジョン・フォン・ノイマン

計算機と脳 (ちくま学芸文庫)

 脳のはたらきはアナログ的なものなのか,デジタル的なものなのか?コンピューターの開発にも大きく寄与したフォン・ノイマンが数学者の視点から脳のしくみを考察した,最晩年の著書.ニューロンのふるまいとアナログ計算機・デジタル計算機の処理手順を比較しつつ,中枢神経系のふるまいを記述するためのまったく新しい"脳の言語"の可能性を指摘する.電子計算機が登場して間もない黎明期に,天才数学者が試みた先駆的考察――.

 算装置,制御装置,記録装置,入出力装置をそなえ,記憶装置に内蔵したプログラムに従って順次演算を行う「ノイマン型コンピューター」は,大半のコンピューター(現存)の動作原理とされている.その体系とアーキテクチャーの論理が,本書で概説される.

 エール大学で1956年に連続講演予定であったが,骨肉腫と脳腫瘍で実現できなかった原稿が元となっている.驚異的な計算能力と特異な思考様式から,「1,000分の1インチの精度で噛み合う歯車を持った完璧な機械」の異名をとったジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)にとっては,この講演は脳と計算機についての俯瞰的概説に過ぎなかっただろう.

 本書1章「アナログ計算機の処理手順」「論理的制御」,また2章での「神経系の記憶の問題」「神経系の論理構造」.そのコードやアルゴリズムのいわば「振る舞い」の原理は,コンピューター・テクノロジーの飛躍的発展に対しても風化しない根幹.測りがたい価値を秘めたノイマンという頭脳の遺構であることが解る.

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Title: THE COMPUTER AND THE BRAIN

Author: John Von Neumann

ISBN: 9784480094131

© 2011 筑摩書房